Photo by くにろく
文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)
愛媛県は面積が5676平方㎞で四国北西部に位置し、瀬戸内海や豊後水道に浮かぶ約200の島々も含まれます(愛媛県庁ホームページ、以下HP 地域防災計画 (1)愛媛県地域防災計画(風水害等対策編) 第一編総論第3章 参照)。日本最長の半島「佐多岬半島」を含めた海岸線の総延長は約1700㎞に及び、リアス式海岸の地形を生かして養殖が盛んです。徳島県から愛媛県まで四国中央部を東西に走る四国山地は愛媛県の南側に当たり、西日本最高峰の石鎚山(標高1982m)もそびえています。
県全体としては降水量が少なく温暖で晴天が多いのですが、地方に分けて詳しく見るとそれぞれ特徴があります。冬や夏に湿った風=季節風(モンスーン)が吹くと風上側で雨や雪を降らせるため、風下にあたる東予、中予地方では穏やかな天候となります。一方、宇和海側の南予地方では関門海峡から風が吹くために強風日数が多くなり、雨の日も多くなります(松山地方気象台 愛媛県の気象特性について参照)。
愛媛県といえば特徴的な強風(局地風)「やまじ風」が吹くことで知られています。やまじ風は台風や低気圧が日本海を通過する際に吹き、電柱が折れたりトラックが横転したりする被害が出るほか、農作物にも大きなダメージを与えています。山形県の「清川だし」と岡山県の「広戸風」とともに日本三大悪風の一つとして数えられています。
過去に愛媛県に被害を及ぼした気象災害を見ると、台風災害が多く見受けられます(愛媛県HP地域防災計画(資料編)参照)。昭和9年(1934年)9月21日に高知県の室戸岬に上陸した「室戸台風」は、気圧が参考記録で911.6hPa(ヘクトパスカル)と日本史上最大の超大型台風だったと言われています。愛媛県でも9月17日~21日の期間降水量が千足山449.0㎜、中津329.6㎜、丹原 308.7㎜、西条303.9㎜となり、死者行方不明者30人、負傷者7人、家屋全半壊156戸、家屋流失71戸、家屋浸水6314戸などの被害が出ました。
また昭和20年(1945年)9月16~17日には昭和三大台風の一つ「枕崎台風」が襲来し、期間降水量は千足山886.0㎜、大洲470.0㎜、泉469.2㎜、角野434.4㎜、愛媛県の死者行方不明182人、負傷者 328人、家屋全半壊1万7898戸、家屋流失890戸、家屋浸水1万5561戸となりました。
近年で特筆すべきは西日本豪雨と呼ばれ、後に「平成30年7月豪雨」と名付けられた災害でしょう。気象庁によれば平成30年(2018年)6月28日~7月8日までの総降水量は四国地方で1800mm、東海地方で1200mmを超え、全体の死者224名、行方不明者8名、負傷者459名、住家全壊6758棟、半壊1万878棟(気象庁HP 平成30年7月豪雨 前線及び台風第7号による大雨等参照)、愛媛県では死者33名、安否不明者1名、重傷者35名、住家全壊627棟、半壊3118棟(愛媛県HP 被害状況 平成30年7月豪雨による人的被害、住家被害について(令和4年6月1日時点)参照)と大きな爪痕を残した災害でした。
愛媛県では平成30年7月豪雨の後に「人を守る」、「生活を守る」、「産業を守る」の3本柱を細分化し、短期・中期・長期の目標を設定して一つずつ取り組んでいます(愛媛県HP 復興に向けた今後の対応参照)。
●料理名:鯛めし(愛媛県)
江戸時代、愛媛県は「伊予国(いよのくに)」と呼ばれ「伊予八藩」(西条藩、小松藩、今治藩、松山藩、大洲藩、新谷藩、吉田藩、宇和島藩)に分かれていました。明治4年(1871年)の廃藩置県で「伊予八県」となり、その後は石鐵(いしづち)県と神山県の2県になって明治6年(1873年)に両県が合併して愛媛県となりました(愛媛県HP みなさんのふるさと「愛媛県」参照)。ちなみに県名は『古事記』に登場する「愛比売」から名付けられたそうです。「愛」はかわいい・愛すべき、立派なという意味で、比売は女性のことを指すそうです。
ところで愛媛県といえば「みかん」のイメージが強い方も多いと思います。実はみかんとは温州みかんのことを指し、和歌山県が日本一の生産量を誇ります。温州みかんを除く、年明けから5月まで出回るあらゆる柑橘類のことを「中晩柑」と呼ぶのですが、愛媛県は中晩柑の生産量が46年連続日本一です。そしてキウイフルーツの生産量も35年連続日本一なのです(中晩柑、キウイフルーツともに令和2年現在)。
日本で一番という繋がりでいえば、有名な道後温泉は、『古事記』にも載っている日本最古の温泉だそうです。さらに大島と今治間の約4㎞の来島海峡に架かる来島海峡大橋は、世界初の三連吊り橋として有名です。
美味しいものも多く歴史的名所もたくさんある愛媛県の郷土料理に選んだのは、県の魚・真鯛を使った「鯛めし」です。魚屋さんに行ったところ、この日は皮つきのものは養殖の真鯛しかなかったため皮のない刺身用の天然真鯛のサクを購入しました。レシピは農林水産省「うちの郷土料理 愛媛県鯛めし(たいめし)」を参考にしています。
★真鯛と昆布だけで炊く「鯛めし」
昔、愛媛に出張に行った際に「鯛めし」を食べました。お釜で炊いた鯛めしに鯛以外の具が沢山乗っていて、ずいぶん豪華な郷土料理だなと思いました。鯛の品の良い香りと味がご飯にしみて、本当に美味しかった記憶があります。
調べると鯛めしの歴史は古く、『日本書記』の神功皇后の朝鮮出陣(三韓征伐)の時にまで遡ります。伝承か実話か定かではありませんが、この出来事は年代的には仲哀8年(199年)ごろのことだとも言われています。勝利を祈願して漁民たちは鯛を献上し、鯛をご飯と炊いて皇后に献上したところ大変喜ばれたということです。
今回の具は鯛のみのレシピにしました。レシピには水もしくはだし汁とあるのですが、昆布や酒も入れますので私は水で炊きました。それでも十分に昆布と鯛のうまみが出ていました。
ただ、一つ後悔したのはレシピの薄口醤油ではなく濃口醤油を使ったことです。深く考えず濃口醤油が家にあるから入れたのですが、おこげが出来て嬉しかったものの、鯛めしの上品な雰囲気には薄口醤油のほうが良かったと感じました。
鯛の皮つきを使うときには事前に鱗をよくとってください。見た目を豪華にしたい時は、茹でた海老やキヌサヤなどを後から鯛めしに乗せれば彩りも良く、おもてなし料理になります。
〈2022. 10. 07.〉
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