スイスにみる日本の山村 活性化可能性
アルプス峡谷集落に学ぶ
川村 匡由(かわむら まさよし)
武蔵野大学名誉教授
「来年のことをいえば鬼が笑う」とはよくいったものである。まして新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の収束の兆しがみえつつあるものの、なお予断を許せないなか、来年秋、小生を同行講師とするスイスツアーに参加され、限界集落化している日本の山村の活性化を考える国際比較はいかがなものかと考えているが、そのような折、今般、本「WEB防災情報新聞」よりその趣旨や内容を寄稿するよう依頼された。
小生の専門は社会保障、地域福祉、防災福祉で、本紙2020年9月17日付けで「スイスの防災福祉に学ぶ」と題し、同国の最新事情を寄稿させていただいた。
WEB防災情報新聞:川村匡由「スイスの防災福祉に学ぶ」(2020年9月17日付け)
このため、ご記憶のある方もおられるかもしれないが、長年、同国の山村や都市部を現地調査、国際比較して日本の政治・経済・社会のありようを研究しているが、山村に目を転ずれば同行の場合、日本と異なってどこを訪れても公共交通機関が整備され、春から秋はトレッキング、冬はスキーにと内外の観光でにぎわっている。
今回視察するラウターブルンネン一帯もその一つで、標高約800mのアルプスのU字谷や同1600mの断崖の上部にたたずむ人口450~2700人足らずの六つの集落(峡谷共同体)だが、地元の人々は中世以来、牧畜や林業、観光などの地場産業や生活協同組合運動、救命救急、核シェルターの整備などによって地域の持続可能性を追求しており、少子高齢化などによって過疎化していないどころか、ますます発展している。
そればかりか、近年はコロナ禍、ワーケーション(休暇地勤務)によって都市部の若者の移住さえみられる(下地図、写真)。
これに対し、日本の山村は少子高齢化や東京など都市部への人口流失、赤字路線の廃止、市町村合併、コンパクトシティ構想、少子高齢化によって過疎化が加速化され、かつその弱みに付け込まれた産業廃棄物の捨て場や自衛隊駐屯地、米軍基地、原子力発電所の建設という名の札束で頬を張られている。筆者ら研究仲間が過去10年にわたって調査した群馬県南牧(なんもく)村もその一つである(下地図、写真)。
そこで、このような日本とスイスの山村の現状を国際比較し、今後の地域活性化や防災・減災などの参考になればと2016年、『脱・限界集落はスイスに学べ』農山漁村文化協会、2017年、『防災福祉のまちづくり』水曜社、そして、2020年、『防災福祉先進国・スイス』旬報社(本紙紹介記事・下記リンク参照)を続刊した結果、このうち、『防災福祉のまちづくり』が日本社会福祉学会誌に紹介されるなど各方面で好評をいただいた。
WEB防災情報新聞:川村匡由・著『スイス防災福祉先進国』(「防災福祉先進国 スイスに学べ」2020年7月16日付け)
来年9~10月、小生を同行講師として5泊6日の日程で現地研修するスイスツアーはこれらの愛読者からのリクエストを受け、実施するものである。
具体的には、旅行先として人気のグリンデルワルトの反対外のU字谷にあるラウターブルンネンに延泊し、農林業の保護や環境保全、インフラの持続化、地域医療・福祉、有事・災害対策を講じている山村の実情を視察し、日本の山村における活性化や防災・減災、さらには資本主義国家ながら北欧の社会民主主義国家並みのスイスの政治・経済・社会全体を考え、国際比較の機会になればと考えている。詳しくは、同ツアーを主催する株式会社アトラス旅行へお問い合わせを――
株式会社アトラス旅行
電話: 076-259-6133 FAX: 076-259-6147 Email:welcome@atlastours.co.jp
〈2022. 07. 21. by Bosai Plus〉