豪雨や騒音下でも聞き取りやすい防災無線技術
富士通ゼネラル、神戸大学との共同研究で 防災無線放送の新技術を開発
――災害時の安全確保に貢献へ
防災行政無線は、防災情報を住民に周知することを目的に設置される同報無線放送で、全国の市町村等が設置・運用し、緊急情報(地震や津波、土砂災害警戒情報、国民保護情報など)のほかに、折々の情報提供を放送している。ただ、豪雨や騒音下では聞き取りにくいという声も多く、放送内容の確認のために別途、ホームページやメール、LINEなど、補完ツールを導入しているところも多く、緊急時の情報伝達には時間差も生じ得る。
この問題の改善に向けて、株式会社富士通ゼネラル(神奈川県川崎市)は、神戸大学と共同で、防災行政無線の放送内容をより確実に伝達するための新技術「Sound Improvement Algorithm For Outdoor Loudspeaker Stations」(以下、「SIAFOLS・サイアフォルス」)を開発した。
富士通ゼネラルはサステイナブル経営の重点テーマの一つである「社会への貢献」の実現に向け、安心して住み続けられるまちづくりなどに取り組んでいて、その一環として、防災行政無線を提供している。同社は、音声情報伝達の研究を行う神戸大学との共同研究を実施、「強調アルゴリズム」を応用して、季節や天候状態に合わせ放送音を自動で聞き取りやすく変換する技術「SIAFOLS」を開発した。
同社では今後、全国自治体の防災行政無線へのSIAFOLS搭載を進め、災害時における地域住民の安全確保にさらに貢献したいとしている。
【 新技術の特長 】
豪雨などの環境下で認識しやすい放送を行うため、季節や天候などの変化に合わせて自動で強調アルゴリズムを適用。これにより、SIAFOLSの効果を検証した実証実験では、従来の放送音に比べ単語了解度(聴取者が完全に理解できた単語数と、放送した単語数との比をパーセントで表したもの)が55%から80%へと大幅に向上した(日本音響学会による「災害等非常時屋外拡声システム性能確保のためのASJ技術規準」に基づき実施)。
さらに、自治体庁舎から一律の音質で行われていた従来の放送と異なり、屋外子局やスピーカーごとに音声を制御するため、車の通行など特定の屋外子局周辺で発生している騒音に対しても対応が可能だという。
富士通ゼネラルでは、SIAFOLSの提供開始予定を2023年4月からとし、「持続可能な社会システムの構築、安心安全な社会の実現に向けて、今回の新技術を業界の標準とするべく広く提案していく」としている。
〈2022. 05. 25. by Bosai Plus〉