府県市町村社協の備えと広域連携へ 情報共有進む
徳島県発:南海トラフ 「社協」福祉防災 連携へ
――災害時の支援と平時の支援は連続する 防災科研が後押し
2011年東日本大震災発生当時の状況が西日本太平洋沿岸部で発生することを想定し、各地の府県・市町村社会福祉協議会組織が、平時からなにをどう備えるべきか、また発災後にどのように対処すべきなのかを検討する研修会や意見交換会が、国の「防災対策に資する南海トラフ地震調査研究プロジェクト」(文部科学省科学技術試験研究委託事業)の一環として試みられている。
府県市町村社協の意見交換会は、昨年10月から同プロジェクト推進研究機関である防災科学技術研究所を事務局として数回持たれているが、去る1月13日の会合を本紙が傍聴する機会(コロナ禍のためオンライン)を得たので、本紙「福祉防災」特別企画に合わせ、ここでリポートする。
意見交換会は、災害が発生する前の期間(平常時)こそがもっとも余裕があるはずで、その期間にどのような対策を行い、その実施のための知識・情報はなにか、また情報入手の手法について検討する趣旨だ。
●「災害ケースマネジメント」をキーワードに
今回の意見交換会は徳島県からの配信ということで徳島県社協を中心に“想定被災地”の社協(静岡県、愛知県、大分県など)の担当者や、行政の防災、福祉課担当者のほか、日本青年会議所四国地区ブロックからの参加もあった。オブザーバーとして徳島県弁護士会(堀井秀知氏)、徳島大学(上月康則教授)が発言した。司会進行は全国社会福祉協議会・園崎秀治氏と防災科研・水井良暢氏があたった。
冒頭、徳島県社協からプレゼンがあり、県社協は県域をカバーすることから、大枠としては福祉救援合同本部、県災害ボランティアセンターの機能整備への取組みを強化していること、コロナ禍での大規模災害に備え、関係者が密に連携できるよう、顔、名前を呼び合える関係づくりをめざしていることなどを伝えた。
各社協、行政の担当者から現況の活動報告や課題が提起されるなかで、徳島弁護士会で災害対策委員長を務める堀井秀知弁護士からは、東日本大震災以降、被災者の生活再建支援が大きな課題となっているとし、今後の活動方針のキーワードとして「災害ケースマネジメント」を取り上げた。
「社協や災害ボランティアセンター、NPOと協働して再建支援を展開する、被災者一人ひとりの課題についてチームで取り組んで自立を助けようという考え方」だと紹介。「災害時の要援護者支援と平時の支援は完全に連続している」とし、社協の権利擁護事業と合わせ、弁護士と連携して被災者の災害対応、支援活動を展開することが重要だとした。
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KEYWORDS:
「社会福祉協議会」とは ――「地域共生社会」の実現をめざして
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社会福祉協議会(略称:社協)は、社会福祉活動の推進を目的とした非営利民間組織で、1951年制定の社会福祉事業法(現在の「社会福祉法」)に基づいて、都道府県・指定都市と各市区町村に設置・運営されている。
その活動は、民生委員・児童委員、社会福祉施設・社会福祉法人などの社会福祉関係者、保健・医療・教育など関係機関の参加・協力のもと、「地域の人びとが住み慣れたまちで安心して生活することのできる『福祉のまちづくり』の実現」をめざすもので、各種福祉サービスや相談活動、ボランティアや市民活動の支援、共同募金運動への協力など、全国的な取組みから地域の特性に応じた活動での地域の福祉増進に取り組む。
とくに近年、福祉と防災の連携の重要性が指摘されていることから、社会福祉協議会としても、福祉と防災の縦割りの打破をめざして、「個別避難計画づくり」や「災害ケースマネジメント」など防災分野での積極的な役割に注目している。
社会福祉協議会の全国組織である社会福祉法人全国社会福祉協議会(略称「全社協」)は、各地社協とのネットワークにより、福祉サービスの利用者や社会福祉関係者との連絡調整や活動支援、制度改善に取り組み、21世紀における「地域共生社会」および「持続可能な開発目標(SDGs)」の「誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会」の実現という2つの方向性をもとに、「ともに生きる豊かな地域社会」の実現をめざす。
「全社協 福祉ビジョン2020~ともに生きる豊かな地域社会の実現に向けて~」
〈2022. 04. 15. by Bosai Plus〉