約33〜36億人が脆弱な状況下で生活
 適応策として包括的なガバナンス、人的及び技術的資源、
 情報、能力及び資金

●温暖化対応の限界を警告 生態系、気候ハザードに対する曝露が増大

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第55回総会及び同パネル第2作業部会(WG2)第12回会合が本年2月14日から2月27日にかけてオンラインで開催され、IPCC第6次評価報告書(AR6)WG2報告書(「AR6/WG2報告書」)の政策決定者向け要約(SPM:Summary for Policymakers)を承認、同報告書の本体等が受諾された。

 公表された第2作業部会報告書は、「人為起源の気候変動は、極端現象の頻度と強度の増加を伴い、自然と人間に対して、広範囲にわたる悪影響とそれに関連した損失と損害を、自然の気候変動の範囲を超えて引き起こしている」等と評価。

 予測されるリスクは、「人間及び生態系の脆弱性は相互に依存し、現在の持続可能ではない開発の形態によって、生態系及び人びとの気候ハザードに対する曝露が増大」、「世界の約33〜36億人が気候変動に対して非常に脆弱な状況下で生活」、「気候変動の規模と速度、及び関連するリスクは、短期的な緩和や適応の行動に強く依存し、予測される悪影響と関連する損失と損害は、地球温暖化が進むたびに拡大」、「気候変動の影響とリスクはますます複雑化し、管理がさらに困難になっている。複数の気候ハザードが同時に発生し、複数の気候リスク及び非気候リスクが相互に作用するようになる」、「一部の影響は地球温暖化が低減されたとしても不可逆的となる」、「一部の生態系はハードな(適応の)限界に達し、地球温暖化の進行に伴い、損失と損害が増加し、更に多くの人間と自然のシステムが適応の限界に達するだろう」――

 適応策としては、「都市インフラに関する日常的な意思決定に対する統合的で包摂的な計画及び投資は、都市域及び農村域の居住地の適応能力を大幅に高めうる。衡平な結果は、健康と幸福そして生態系サービスにとっての複数の便益に貢献する」などとしている。

気象庁:IPCC 第6次評価報告書 第2作業部会報告書の公表

P5 1 生態系において観測された気候変動影響(IPCC報告より) - IPCC 適応策の実行を迫る<br>「一部の影響は不可逆的に」
「生態系において観測された気候変動影響」(IPCC「WG2」報告より)
P5 2 人間システムにおいて観測された気候変動影響(IPCC報告より) - IPCC 適応策の実行を迫る<br>「一部の影響は不可逆的に」
人間システムにおいて観測された気候変動影響(IPCC「WG2」報告より)

●本年4月「緩和」、9月「統合報告書」、11月「COP27」を予定

 ちなみに、IPCCには3つの作業部会があり、2021年8月に第1作業部会が温暖化の科学的根拠について評価した報告書を公表。今後20年以内に産業革命前からの気温上昇が1.5℃になる可能性があると指摘、温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることに「疑う余地がない」と断定した。第3作業部会はこの4月、「緩和」についての報告書を予定している。前回2014年に「世界全体の温室効果ガス排出量を今世紀末にほぼゼロにできれば、気温上昇を2度以内に抑えることができる」と指摘した。

 さらに本年9月には各部会の報告をまとめた「統合報告書」が出る予定で、これをベースに11月のCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議/エジプト開催予定)で改めて気候変動についての課題が検討されることになる。

〈2022. 03. 25. by Bosai Plus

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