三重大学や水産大学校などの調査団が、
「JPCZ」雪雲の帯の下に向かい世界初の調査
――雪雲生成の解明へ
●冬季の大雪要因となる「JPCZ」 日本海側北陸地方を中心に大きな影響
最近、冬季の気象情報で、「JPCZ」という用語を見かける。「JPCZ」とは「日本海寒帯気団収束帯=Japan sea Polar air mass Convergence Zone」のことで、その英語の頭文字でつくられた気象用語だ。
気象庁は予報解説資料などに用いる「前線に関する用語」で、このJPCZを、「冬に日本海で、寒気の吹き出しに伴って形成される。水平スケールが1000km程度の収束帯。この収束帯に伴う帯状の雲域を、『帯状雲』と呼ぶ。強い冬型の気圧配置や上空の寒気が流れ込む時に、この収束帯付近で対流雲が組織的に発達し、本州日本海側の地域では局地的に大雪となることがある」と説明している。
大雨を降らせる「線状降水帯」は私たちにもなじみの防災気象用語になったが、成り立ちは異なるものの、JPCZはその“降雪版”として知っておくべきだろう。
冬の日本海では、暖流である対馬海流などの影響で比較的暖かい海水の上を、寒気団の冷たい風が通り抜けることで、背の低い雪雲が筋状に何十本も平行に並ぶ(筋状収束雲)が、時に、この筋が平行ではなく、一定のラインで衝突する。これが「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」だ。
その原因として、朝鮮半島北部の白頭山や長白山脈の影響が指摘されていて、これらの高い山を境に日本海に流れ込む寒気の気流が二分され、再び合流するときに収束してJPCZを形成する。JPCZは主に日本海側の雪に影響を及ぼすが、日本列島を越えて太平洋側にまで伸びることもある。
影響を受けやすい地域としては、福井県嶺南地方、岐阜県西部山沿い、滋賀県北部、福井県嶺北地方、兵庫県北部、京都府北部、鳥取県、島根県東部、山口県北部、長野県北部山沿いなど。
しかし、「JPCZ」の上陸地点は気圧配置に対応して東西に移動するため決まった位置はなく、東北南部から山陰までの広い範囲に影響を及ぼし得るという。
「JPCZ」の影響による大雪は、近年では2018年1月10日〜12日の北陸平野部、特に新潟県下越地方での記録的大雪(新潟市:積雪80cm、伏木87cmなど)、2月5日〜8日の北陸西部や山陰西部での記録的大雪(福井市147cm、金沢市87cm、境港市64cm、松江市49cmなど)、2021年1月7日〜10日の北陸平野部の広範囲で記録的大雪(高田市249cm、富山市128cm、福井市107cmなど)が記憶に新しい。
ちなみに、「JPCZ」の実態解明のため、世界初の調査団となる三重大学気象・気候ダイナミクス研究室・立花義裕教授らの調査団が本年1月19日から約10日間、水産大学校の練習船「耕洋丸」で山口県から出港、日本海で調査を行っていて、その成果が期待されるところだ。
〈2022. 02. 20. by Bosai Plus〉