Photo by くにろく
文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)
この冬は強い寒気がたびたび流れ込み、日本海側や北陸では大雪や猛吹雪となっています。福井県は過去に何度か大雪に見舞われており、その代表的な災害が通称「三八豪雪」と「五六豪雪」です。
日本は冬になると大陸北東部からの冷たい空気が高気圧として日本列島へ押し寄せ、一方日本上空は西に低気圧が発達する「西高東低の気圧配置」つまり「冬型の気圧配置」となります。気象庁ホームページ(以下,HP) 災害をもたらした気象事例「昭和38年1月豪雪」によれば、昭和37年(1962年)12月~昭和38年(1963年)2月は冬型の気圧配置が続く中で前線が通過したために降雪量が多く、1月31日には福井市で福井地方気象台観測史上最高の213cmの積雪となりました。他の県でも富山186cm、金沢181cm、伏木(富山県高岡市)225cm、長岡(新潟県長岡市)318cmという稀に見る積雪量を記録して交通はストップし停電も発生、農業被害も相次いで人々の生活に大きな影響を与えました。
当時の写真には、二階の高さほどに積もった雪の上を人々が電線をくぐって歩く姿が写っています(福井県文書館 「三八・五六」 -豪雪の記録-参照)。さらに2月には1月に降った雪による雪崩や洪水が発生し、この大雪に関連した全国の災害の死者は228名、行方不明者3名、負傷者356名、住家全壊753棟、半壊982棟、床上浸水640棟、床下浸水6338棟(被害者数などは消防白書より)にのぼり、昭和38年の大雪ということで「三八豪雪」と呼ばれています。
一方、「五六豪雪」とは昭和55年(1980年)12月~昭和56年(1981年)3月の間に発生した雪害を指します。気象庁によれば12月中旬に日本海北部からオホーツク海に向けて低気圧が発達・停滞したために日本海側で大雪となり、雪の重みによる送電線切断や強風による漁船遭難の被害が多く発生したとのことです。東北地方や北海道での大雪の後には北陸地方を中心に降雪が続き、福井県敦賀市で196㎝、山形で113㎝を記録しました(気象庁HP 災害をもたらした気象事例「昭和56年豪雪」参照)。全国で死者133名、行方不明者19名、負傷者2158名、住家全壊165棟、半壊301棟、床上浸水732棟、床下浸水7365棟(消防白書より)の被害を出しました。
そして五六豪雪から37年ぶりに福井で大雪となったのが平成30年(2018年)2月5日~13日の大雪でした。福井市では最大積雪深が147㎝で、越前市や大野市では観測史上最多の積雪を観測、また石川県加賀市でも177㎝を記録しました。北陸自動車道や中部縦貫自動車道は通行止めとなり、国道8号では約1500台の車両が滞留し、JRやバスの運休、小中学校、高校の休校、生活物資の一時的不足など雪のために社会生活が混乱しました(福井県HP 福井県の「平成30年豪雪の概況」参照)。三八豪雪や五六豪雪時とは時代が異なり、自家用車利用による新たな災害の発生や流通経路の途絶、高齢化による孤立の問題など現代的な新たな問題が浮上しました。関係機関の連携強化の必要性を再認識させた雪害でした。
●料理名:とびつき団子(福井県)
温暖湿潤な気候の福井県ですが冬には豪雪地帯となります。過去の災害でご紹介したように、何度も大雪に見舞われて住民の方は住みづらいと感じているのではと思ったのですが、なんと全47都道府県幸福度ランキング2020年版(一般財団法人日本総合研究所が算出)では福井県が1位でした。過去にも3度、1位を獲得しています。幸福度は健康、文化、仕事、生活、教育といった全75指標によって同研究所が分析して算出していますが、福井県民は長寿の方が多く健康的で学力テストも体力テストでも常に全国でトップレベル、さらに仕事に対する幸福度も高いようです(福井県HP 幸福度日本一ふくい参照)。
ところで現在の福井県の場所には、もともと越前国と若狭国がありました。現在は9市8町(令和2年3月31日現在)で、かつての若狭国は南側のおおい町、小浜市、高浜町、若狭町、美浜町の5つで敦賀市を含めて嶺南地方と呼ばれています。一方、越前国だったのは、あわら市、坂井市、福井市、永平寺町、勝山市、鯖江市、越前町、越前市、池田町、大野市、南越前町、敦賀市で、敦賀市を除く北側を嶺北地方と呼んでいます(福井県HP 早わかり福井~福井統計データブック~ 令和3年度版参照)。
今回はその中から、嶺北地方のあわら市、坂井市の郷土料理である「とびつき団子」をご紹介します。お盆の15日に仏壇のお供えものとしてよく作られていたお菓子です。おはぎで使う小豆ではなく、福井のどの家でも昔は植えていたとされる「ささげ」という豆を使います。見た目は小豆とよく似ていますが、ささげは皮が硬く、小豆と比べて煮崩れがしないため調理しやすい豆です。
★茹でたささげを砂糖水に浸す
参考にしたレシピは、農林水産省のうちの郷土料理「とびつき団子 福井県」です。茹でたささげをすり潰したりせずにそのままくっつけているところがユニークです。作り方はとっても簡単。ささげは柔らかくなるまで茹でてお湯をよく切った後、1時間ほど砂糖水に浸しておきます。団子の方は、もち粉とうるち米粉にぬるま湯を入れて耳たぶほどの柔らかさになるまで練り、ちぎって形作ったら熱湯で茹でます。浮かんで来たら取り出してお湯を切り、乾かないうちに浸しておいたささげをまぶすだけです。
農林水産省のページによれば、昔は砂糖が貴重だったため塩やきな粉をつけて食べたそうです。名前の由来はささげ豆が団子にとびついているように見えるから、または美味しくてとびつくように食べてしまうからと言われています。とびつき団子は噛むと歯切れがよく、砂糖水に漬けたささげはほんのり甘くて素朴な美味しさです。武家では「小豆は破れると切腹したように見えて縁起が悪い」と敬遠されたため、ささげを使うようになったという話も残っています。
〈2022. 02. 07.〉
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