日本海溝・千島海溝沿いでM7以上の地震が発生、
より大きな後発地震への備えを住民に注意喚起したい…
●南海トラフ巨大地震“臨時情報”の日本海溝・千島海溝版を検討
内閣府の「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」は2020年4月、北海道から東日本の東北北部太平洋側に延びる日本海溝・千島海溝沿いで起こる海溝型地震について、最大津波高の推計結果を公表。千島、日本海溝で、それぞれマグニチュード(M)9.3、M9.1の過去最大級の地震を想定した場合、津波高は岩手県宮古市で29.7m、北海道えりも町で27.9mなど、一部で東日本大震災を超す結果となった。日本海溝・千島海溝沿いの領域では、巨大地震や、大津波を発生させる“津波地震”と呼ばれる地震まで、多種多様な地震が発生しており、幾度となく大きな被害がもたらされてきた。
中央防災会議防災対策実行会議の下に設置された「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ(WG)」は、 同海溝で想定すべき最⼤クラスの地震・津波に対する被害想定や防災対策の検討を進めている。
防災対応に資する情報発信の必要性等を検討するため、南海トラフと同様の仕組み(南海トラフでは「臨時情報」の名称)として、 M8程度の地震が発生する「半割れケース」、M7程度の地震が発生する「一部割れケース」、異常な地殻変動が観測される「ゆっくりすべりケース」に相当する現象の評価基準を明確にし、 科学的観点から各ケースに該当する現象の評価基準を検討する「日本海溝・千島海溝沿いにおける異常な現象の評価基準検討委員会」(以下、「異常現象評価検討委」)をWGのもとに設置し、検討を進めている。
●想定震源域は M7以上の地震が約2年に1度起こる「地震多発地帯」
「異常現象評価検討委」は去る10月7日、日本海溝・千島海溝沿いでM7以上の地震が発生した場合、より大きな後発地震への備えを住民に注意喚起するのが適切だとする報告書案をまとめた。
その根拠とするのが、東日本大震災の51時間前の11年3月8日に三陸沖で起きたM7.3の地震や、1963年に起きた北海道択捉島沖M7級地震の18時間後にM8級が続いた例があるからだ。いっぽう、想定震源域は1904年以降にM7級以上が64回発生し、約2年に1回の頻度でM7以上の地震が起こる「地震多発地帯」だ。
南海トラフ「臨時情報」も確度の高い予測は困難とされる。「異常現象評価検討委」は年内をめどに注意を呼びかける地震の範囲などの報告書をまとめる予定だ。
〈2021. 12. 18. by Bosai Plus〉