アリューシャン地震(M8.1)、チリ地震津波(M9.5)の
遠地津波によるハワイの惨状を伝える
●濱口梧陵国際賞とは 津波防災の祖・濱口梧陵
『稲むらの火』「津波防災の日」「世界津波の日」
国土交通省は去る11月24日、「2021年 濱口梧陵国際賞(国土交通大臣賞)」受賞者を決定し、発表した。受賞者は国外から1名・1団体、国内から1名が受賞した。
濱口梧陵は現在の和歌山県広川町で生誕。安政元年(1854年)11月5日に発生した安政南海地震津波で大津波が広川町一帯を襲ったとき、梧陵は稲むら(稲束を積み重ねたもの)に火を放ち、この火を目印に村人を誘導、安全な場所に避難させた。その後も、被災者用の小屋の建設、防波堤の築造などの復興にも取り組み、後の津波による被害を最小限に抑えたとされ、この逸話は『稲むらの火』として知られる。
濱口梧陵国際賞は、わが国の「津波防災の日」となった11月5日が、2015年の国連総会において「世界津波の日」として制定されたことを受け、津波・高潮などに対する防災・減災に関して顕著な功績をあげた国内外の個人または団体を表彰する趣旨で2016年に創設されている。
今回受賞したのは、松冨英男・秋田大学名誉教授(中央大学研究開発機構客員教授)、Gerassimos A. Papadopoulos・国際自然災害防止・軽減学会会長、太平洋津波博物館(Pacific Tsunami Museum)の2名・1団体で、授賞式と記念講演会が11月29日に行われた。
本項ではこのうち、太平洋津波博物館(Pacific Tsunami Museum)を取り上げたい。
国土交通省:2021年濱口梧陵国際賞(国土交通大臣賞)受賞者が決まりました
●ハワイ島「太平洋津波博物館」
大船渡津波伝承館と連携 東日本大震災津波 漂着物も展示
太平洋津波博物館(Pacific Tsunami Museum)は、米国ハワイ州ハワイ島に1994年に設置された世界で最も歴史ある津波博物館の一つ。1946年アリューシャン地震(M8.1)、1960年チリ地震津波(M9.5)での遠地津波によるハワイの惨状を人びとに伝えることにより、これら悲劇の記憶が忘れられることなく、次世代に伝承している。
アリューシャン地震津波では太平洋沿岸の北アメリカ西岸、日本などでは津波はほとんど観測されず、ハワイに被害が集中し、死者・行方不明者は165名に及んだ。
アリューシャン地震津波が4月1日に発生したことから、4月を「津波啓発月間」(Tsunami Awareness Month)と定め、住民に津波警報の基礎知識を広め、避難地図を配布し、安全な避難場所を周知してきた。学校用の津波履修科目をつくり、津波研究を奨励し、メディアの津波報道向けの教本も配布。津波災害の軽減や備えに対する貢献は大きく、将来を担う世代に津波災害の教訓を伝承する先駆的組織として高く評価されている。
ちなみに同館では、2011年東日本大震災の津波で流出し、ハワイ島に流れ着いた国道45号の視線誘導標(道路の端などに設置、道の形状を分かりやすく示したもの)を展示している。また、岩手県大船渡市の大船渡津波伝承館と、2015年6月に連携の覚書を交わしている。
太平洋津波博物館(Pacific Tsunami Museum)(英語サイト)
〈2021. 12. 01. by Bosai Plus〉