地球温暖化が進行した世界で
2019年東日本台風(台風第19号)が襲来…
環境省がシミュレーション
●「1.5度」、努力目標から「世界目標」へ
英国グラスゴーで開かれていた「国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)」は11月13日、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑える努力を追求するとした「グラスゴー気候合意」を採択して閉幕した。条件付きでの石炭火力発電の削減、化石燃料の補助金廃止も初めて明記し、各国が連携して対策を加速させることを確認したが、これをどう実現していくか具体策が問われることになる。
2015年のCOP21で採択されたパリ協定は、気温上昇を2度よりかなり低くし、できれば1.5度に抑えるという目標を掲げていたが、今回の合意は努力目標だった1.5度を格上げし、事実上、新たな世界目標と位置づけている。また、合意文書では、1.5度目標の実現に向けて、世界全体で温室効果ガスの排出量を「今世紀半ばには実質ゼロにすること」を明記、この10年間の行動を加速する必要があると強調した。
各国に30年の削減目標や対策の強化を促すために、5年に1回の合意だった目標見直しを年1回とする方針も示され、2022年COP27に向けて、各国の実践の度合いが問われることになる。
●環境省の「気候変動による災害激甚化に関する影響評価(中間報告)」
環境省では、将来の気候変動影響を踏まえた適応策の実施に役立てるため、地球温暖化が進行した世界で、近年大きな被害をもたらした台風と同様の気象現象が発生した場合にどのような影響がもたらされるか評価する事業「気候変動による災害激甚化に関する影響評価」(以下、「影響評価」)を実施している。本年(2021年)7月2日、その中間報告を公表しているので、概要を紹介する。
「影響評価」では、2019年東日本台風(台風第19号)を対象に、地球温暖化が進行した世界で同様の台風が襲来した場合の影響について評価し、その結果、地球温暖化が進行した世界では台風がより発達し、同台風通過時には氾濫を防ぐことができた河川での氾濫のリスク、沿岸や河川の河口付近での高潮による浸水リスクが高まることが示されている。2021年度は、同結果の妥当性の検証や充実を図るとともに、2018年に近畿地方などに大きな被害をもたらした2018年台風第21号も対象とする予定だ。
「影響評価」は、実際に日本に襲来した特定の台風について、地球温暖化が進行した条件下において、同じ位置で台風が発生し、実際と近い経路を通過した場合の中心気圧や雨量、風速などの変化、それによる洪水や高潮への影響について、スーパーコンピュータを用いたシミュレーションを行うもの。1年目(2020年度)は、統計開始以来最大の水害被害額を記録した2019年東日本台風(台風第19号)を対象とし、「地球温暖化が進行した世界」(*下記2つのシナリオ)で同様の台風が襲来した場合の中心気圧や雨量、風速などの変化、洪水や高潮への影響についてスーパーコンピュータを用いたシミュレーションを実施した。
*「地球温暖化が進行した世界」:
①2度上昇シナリオ:世界平均気温が工業化以前(18世紀半ば頃)より2度上昇すると仮定(積極的な緩和策により将来の温暖化をかなりの程度抑制した場合)
②4度上昇シナリオ:世界平均気温が工業化以前(18世紀半ば頃)より4度上昇すると仮定(現状を超える緩和策が行われず、温暖化の抑制ができなかった場合)
「影響評価」結果概要として環境省は、「2度上昇シナリオ、4度上昇シナリオともに、2019年東日本台風(台風第19号)は、現在よりも強い勢力を保ったまま日本に接近し、関東・東北地方により多くの雨をもたらす結果となった」としている。
環境省:気候変動による災害激甚化に関する影響評価(中間報告)について
環境省:勢力を増す台風~我々はどのようなリスクに直面しているのか~〔令和元年東日本台風の疑似温暖化実験〕(パンフレット)
〈2021. 12. 01. by Bosai Plus〉