地球温暖化は想定内だが… 海底火山 軽石漂着は“外”
「想定内でも止められない」地球温暖化、
地球・人類の危機に“あなた”はどこまで言い訳を続けるか
【「 想定内」であれば大丈夫? 想像力で「想定内・外」を取り込む 】
●地球温暖化 絶滅に向かっているのに “座して死を待つ”?
国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が、「第1作業部会」による地球温暖化の「自然科学的根拠」をまとめた「第6次評価報告書」を去る8月9日に公表し、今後20年以内に産業革命前からの気温上昇がパリ協定の目標である1.5度に達する可能性があること、そして、温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることについて従来の表現より踏み込んで「疑う余地がない」と断定したことは記憶に新しい。
昨日10月31日、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が、英国グラスゴーで始まった。同会議はコロナ禍で1年延期されたもので、最近の動向・背景を見るとこの間、米国はトランプ前政権が離脱した温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に復帰し、6月の主要7カ国(G7)サミットでは、産業革命前からの気温上昇を1.5度に抑えるという「努力を加速」などで一致した。しかし、7月の主要20カ国・地域(G20)環境・気候・エネルギー相会合では、先進国と新興国の意見が食い違い、同様の合意に至らなかった。そして改めて冒頭のIPCC・第1作業部会による「(温暖化の原因は人類が排出した温室効果ガスであることに)疑う余地がない」との断定に至っている。
COP26では、各国が改めて経済の脱炭素化に向けた取組みの強化を表明し、1.5度目標達成に向けた努力を誓約することが期待されている。しかし、地球規模の環境課題の保全に指導的役割を果たす国連環境計画(UNEP:United Nations Environment Programme)は直近の去る10月26日、「Emissions Gap Report 2021」(排出ギャップ報告書2021)を公表し、現状の各国の30年の削減目標を達成しても今世紀末に「2.7度上昇する」と予測、この目標では「1.5度の抑制には遠く及ばない」と、COP26開幕を前に、厳しい評価を下した。アントニオ・グテレス国連事務総長は、今回の報告書により、「世界が気候の大惨事に向かっていることが示された」と指摘した。
UNDPは新しい「Don’t Choose Extinction(絶滅を選択するな)」キャンペーンの目玉として、10月27日に、言葉を話す恐竜“Frankie”を国連本部に連れてきて、世界の指導者に向けて演説をさせるという短編広報動画を公開した(本紙P. 1カット図版参照)。恐竜の演説は、小惑星の地球衝突で彼らが絶滅したように、「みんなが絶滅しないために、より多くの気候変動対策が必要だ。温暖化を許容する“口実”はもはや許されない。絶滅を選択するな」と、世界の指導者、さらには世界の40億人に呼びかけるものだ。
この広報動画の一部は、わが国ではNHKをはじめ民放テレビ局などで話題として単発的に紹介されたが、国連制作の“おもしろ動画的”な紹介にとどまり、「世界が気候の大惨事に向かっている」という深刻度とは少なからぬギャップが感じられた。
UNDPの広報動画は、化石燃料の補助金がいかに地球温暖化を促し、気候変動の抑制に向けた重要な進歩を相殺し、金持ちに利益をもたらすことで不平等を推進しているかにスポットライトを当てている。温暖化を許容する“口実”として、「温暖化阻止のため、私にできることはやっている」、「温暖化より日々の生活が大切」「私一人ではなにもできない」など19の事例をあげ、そのなかにあなたの“口実”も入っていないか、と。
COP26は、10月31日から11月12日まで開催され、世界共通の長期目標として「2度目標の設定」、「1.5度以内の努力目標」などについて合意し、パリ協定の実施指針(ルールブック)を最終決定できるかどうかが焦点の1つとなる。
UNDP:恐竜が国連で世界の指導者に呼びかけ(動画/英語版)
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小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火
軽石漂着――地球史から見れば“繰り返されてきたはず”?
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9月16日に能登半島で震度5弱の揺れが発生。10月6日には青森県で震度5強、その翌日10月7日には千葉県北西部地震で埼玉県と東京都区部で震度5強の地震を観測。10月20日には熊本県の阿蘇山が噴火し、気象庁は阿蘇山の噴火警戒レベルを2(火口周辺規制)から3(入山規制)に引き上げた――防災白書冒頭の常套句のように、もともと日本は台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火などによる災害が発生しやすい国土であり、日本の立地そのものが“災害リスク満載”であることは言うまでもない。こうした一連の地異が、さらになにか大きな自然災害の前兆であるとはだれも予測できない事象ではあるが、それらは一応「想定内」ではあるのだ。
しかし、やや遡って本年8月13日、11年ぶりに小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火、新島が出現した。その噴火はわが国で戦後最大級、大正桜島噴火級の規模とされ、その際に噴出した東京ドーム80杯分もの軽石などが2カ月をかけて沖縄本島や奄美大島に到達。海上保安庁の巡視艇が航行不能になったり、小さな軽石を餌と間違えて食べた魚が大量に死んだりと報じられ、さらに停電被害や観光産業への被害も予想されている。
海上保安庁の巡視艇での障害には、中国・ロシアの“連合”艦隊の日本周辺での“顔見世”にも影響があるのではと想像をふくらませてしまったが、はるか太平洋沖合いの海底火山「福徳岡ノ場」が噴火して、その“降灰”ならぬ「軽石漂流」が災害級の影響をもたらすとは、まさに「想定外」ではなかったか。
地球温暖化(本紙流命名では「地球炎熱化」)は現代科学が「想定内」としているにもかかわらず、「止められない」状況にある。人類の生存のみならず、現在の地球環境の存続にかかわる想定内の大問題が対策・解決策保留状態だ。
いわんや想定外の自然災害も、となれば、私たちの災害リスクへの想像力という器を広げて備えるしかない。
〈2021. 11. 01. by Bosai Plus〉