「平成」約30年――雲仙普賢岳、阪神・淡路、
そして東日本 教訓を令和に活かせ
● 地球時間のなかでは一瞬の「平成約30年」に、災禍は頻発
元NHK解説委員で中央防災会議専門調査会座長・委員などを歴任、市民の防災啓発や防災士育成・指導で知られる伊藤和明氏による最新書下ろし『平成の地震・火山災害』(近代消防新書、定価・税共990円)がこのほど刊行された。
同書冒頭「はじめに」で「元号が『平成』に変わったのは、1989年の1月、それから約30年続いてきた平成の時代も、さまざまな自然災害が日本列島を席巻し、多くの犠牲者を招いてきた」とし、1991(平成3)年雲仙普賢岳の噴火、1995(平成7)年1月・阪神・淡路大震災、2011(平成23)年3月・東日本大震災の3つの大災禍に触れている。
本書で項を立てて触れた平成に起こった特筆すべき地震・火山事象は19あるが、約30年のあいだに3つのわが国の地震災害史に刻まれる大災禍が起こったということは、令和の時代を迎えた今後も、10年に1度はこのような大災禍が起こり得るということであり、1年半ごとに新潟県中越地震や御嶽山噴火、熊本地震、北海道胆振東部地震などの事象(19項目で取り上げられた災禍)も起こり得る確率になる。
しかも、「おわりに」で述べているように、本書では平成時代の「地震・津波・火山噴火という地球の内因作用による災害を取りあげたが、外因作用による豪雨災害や土砂災害も頻発した」。「長大な地球時間のなかでは、ほんの一瞬にすぎない『平成』の30年間にも日本列島は多くの自然災害を体験……大地が突然の寝返りを打ったとき、重大な社会的損失に遭遇し、うろたえてしまう……」
必ず繰り返す自然災害。「過去は未来への鍵」、過去の災害から得られた教訓をいかに令和の防災に活かすか、その実践が伊藤氏の“後輩”たる私たちに託されている。
●「 防災+サイエンス」の“先駆けインフルエンサー”、伊藤和明氏
伊藤和明氏は1930年12月7日生まれの91歳と“卒寿世代ニューカマー”だが、私たち防災関係者の大先輩であり、その柔和な人柄とともに、機知に富んだ書きぶり、わかりやすい語り口、そして防災に向けての意気軒昂な活動は、災害・防災に携わる人すべてにとって、いまに言う“インフルエンサー”であり続けている。
本紙もまたその薫陶を受けてきたメディアだ。本紙は近年では、2017年12月21日付けで、伊藤氏の「災害史探訪三部作」――「内陸直下地震編」、「海域の地震・津波編」、「火山編」(近代消防新書、2017年12月刊)を紹介。2020年5月15日付けでは伊藤氏監修『明日の防災に活かす災害の歴史 全5巻』(小峰書店、2020年5月刊)を、同年11月15日付けで寄稿「稲むらの火と防災教育」を掲載、また同16日付けで伊藤氏が支援する早大学生企画『稲むらの火』交流会をリポートした。
防災情報新聞(2017年12月21日付け):災害史探訪 未来に備える「鍵」
ちなみに伊藤氏はいまなお月2回ペースで「伊藤和明の防災えんす ―防災を科学する―」(ポッドキャスト)を”放送中”だ。第1回放送「首都直下地震に備える」が2008年12月の放送だったが、直近の放映はなんと第271回「災害流言」(2021年9月1日付け)で、ほぼ13年間続いている(日本防災士会サイトと連携)。
変わることのない温和な語り口での災害教訓・防災解説には説得力があり、知る人ぞ知る――この番組は防災関係者を超えて、根強いファンを有している。
〈2021. 09. 17. by Bosai Plus〉