西日本で活断層地震 発生確率 高い GPSひずみ判定で
大地震発生は想定外か 地殻のひずみ蓄積から発生確率を算出
――西村卓也・京大防災研究所准教授
京都大学防災研究所・西村卓也准教授(測地学・地殻変動論)がこのほど、GPS(GNSS *後述)の観測データから、内陸地震を引き起こす「ひずみ」がどの程度蓄積しているのか分析、西日本での大地震の発生確率を算出し、NHKニュース(文末にリンク)と9月12日放送のNHKスペシャル「MEGAQUAKE 巨大地震 2021」がその詳細を伝えた。
西村准教授の分析結果によると、活断層の分布調査に基づいて同じ地域区分で算出した政府の地震調査委員会の発生確率と比べてGPS推定では、発生確率が2倍以上高くなる。西村准教授が内陸地震予測に活用しているGPSを活用した予測のデータは、全国およそ1300カ所に観測点が点在するGPSデータ。観測点の位置を人工衛星でとらえ一定期間データを採取することで大地の動きをミリ単位で計測。観測点ごとに動く方向や大きさの違いを分析し、地震の原因となる「ひずみ」の蓄積状況を推定した。
なお、GPS(Global Positioning System)は、米国によって航空機・船舶等の航法支援用として開発されたシステムで、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)は、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileoなどの「衛星測位システムの総称」となる。つまりGPSにさらに他の衛星測位システムを加えて機能・性能を強化したものがGNSS。従来の測地観察に比べて、全天候、24時間連続、無人観測が可能で、精度はおおむね水平方向で2〜3mm、上下方向で1〜2cmが達成されている。
今回の西村准教授による公表分は、これまでに分析と検証が終わった西日本を中心とする範囲で、まず、およそ20km四方でそれぞれの場所ごとに30年以内にマグニチュード(M)6.8以上の大地震が起こる確率を計算、そのうえで地域をまとめて確率を算出したという。
その結果、30年以内にM6.8以上の大地震が起こる確率は、鹿児島県と宮崎県、熊本県と大分県のそれぞれ一部からなる九州南部で31%~42%となった。また、四国でも20%~28%と地震調査委員会の予測結果の2倍近くになるなど、多くの地域でGPSに基づく確率が高くなったという。
NHKニュース記事によれば、西村准教授は、「九州南部などでは活断層があまり見つかっていなくても、GPSからひずみが蓄積している地域がわかるため、比較的確率が高くなる傾向になった」とし、2008年岩手・宮城内陸地震や2018年北海道胆振東部地震など、活断層が見つかっていない場所でも大地震がたびたび起きていることから、「活断層で見えなかったリスクがGPSで見えるようになってきている。活断層の調査に加えてGPSのデータも活用し、地震対策につなげることが重要」とする。
西村准教授は今後、関東や北日本でも分析を進める方針で、「日本でも活断層のデータに加え、GPSデータを活用することを働きかけたい」としている。
NHKニュース:西日本の大地震発生確率を算出 GPSデータから地下のひずみ分析
〈2021. 09. 15. by Bosai Plus〉