設計者の注意事項・ノウハウを知る
住団連が作成した設計者向けの住宅の浸水対策マニュアル
浸水が床下か床上かで復旧工事費に大差
住宅生産団体連合会(以下、「住団連」)が先ごろ(2021年7月)、「住宅における浸水対策の設計の手引き」を公開した。設計者が浸水被害リスクのある地域で住宅を設計するうえで参考としてもらう「手引き」で、主な対象は、地上1~3階建ての新築戸建て住宅だ。
設計者が建築主に対して浸水リスクなどを説明し、要望を踏まえた設計目標を設定したり、対策を講じるための情報やノウハウをまとめており、建築主にはもちろん、住宅浸水被害を支援する災害ボランティアにも、ポイントを知るうえで参考になる。
この数年の間だけでも、2018年の西日本豪雨、2019年の令和元年東日本台風、2020年7月の九州地方での豪雨など、毎年のように日本のどこかで甚大な浸水被害が発生している。こうした通常災害化する大規模水害を背景に、国や自治体は、ハザードマップの作成をはじめ、2020年7月からの「宅地建物取引業法」の改正によるハザードマップの重要事項説明項目への追加、2021年5月の「特定都市河川浸水被害対策法」等(流域治水関連法)の改正、そして「水災害リスクを踏まえた防災まちづくりのガイドライン」のとりまとめなど、施策整備を進めているところだ。
住団連は「手引き」作成の背景を、「近年、これまでに報告されていなかった地域においても建物や人命に危険を及ぼす浸水被害が発生するようになってきた」とする。浸水被害は、気象庁が命名するような大水害でなくても同時多発的に多く発生しており、床下浸水など“軽微な被害”でも“建物浸水後遺症”は影響が意外に長引くため、事前対策として住宅設計上の浸水対策が重要なポイントになっているという。
「手引き」は、浸水深に応じた被害状況と復旧方法の事例、復旧工事費の目安、建設地の浸水リスクの確認方法、設計目標の設定方法、浸水対策の検討の流れなどを具体的に盛り込んでいる。また、浸水リスクを整理するためのチェックリスト、想定される被害や復旧費用の確認(浸水が床下か床上かで復旧工事費に大差が生じることがわかる)、浸水リスクに応じて対策を検討するための設計シートも用意するなど実践的なもので、一般建築主や支援ボランティアにもわかりやすい。
住団連:住宅における浸水対策の設計の手引き
〈2021. 09. 06. by Bosai Plus〉