吉備高原に首都移転、再燃か
岩石の磁気が地殻変動によって動いた履歴から、
約4000万年間の地盤安定が判明
● 地殻変動の観点からは、地質学的に安定的な“振る舞い”
岡山大学学術研究院教育学域の宇野康司教授(地球科学領域)、愛知大学経営学部の古川邦之教授らの研究グループがこのほど、地質学と物理学に基礎を置いた古地磁気学と呼ばれる手法でのアプローチで、約1億1000万年前の吉備高原で堆積した地層が保持する磁化情報を分析して、西南日本の古地磁気極移動曲線を確立。
そのデータと安定的なアジア大陸内部データとの比較を行った結果、吉備高原およびその周辺地域が約1億1000万年前以降4000万年間にわたり、地殻変動の観点から安定的であったことを示したと発表した。
この発見は、日本列島で災害に強い地盤を有する地域を検討するうえでも非常に重要な知見だと評価されるという。
今回の研究で得られた古地磁気学的データは吉備高原からのもので、吉備高原は岡山県を中心に兵庫県西部から広島県中部にかけて広がる地質学的に安定な領域(激しい地殻変動を受けてこなかった地域)だという。近年の地球科学的な研究成果によって、この地域が深さ約30kmに達する安定的な岩盤を有しており、また、約3400万年前の当時の地表を流れていた河川の痕跡が途切れることなく追跡できることも明らかになっているという。
これらの観察は、吉備高原が少なくとも3400万年前以降、地質学的に安定な岩盤として存在してきたことを示していて、今回の研究結果は、この地域のより古い1億1000万年前の岩石から得たデータからも激しい地殻変動を反映するデータが認められなかったことで、吉備高原が地質学的により長期間にわたって安定的な振る舞いをしてきたことを示唆している。
地震防災分野で岡山県は比較的に地震が少ないとされてきたが、地質学的に安定的な吉備高原が首都機能の移転先として最適との構想もあり、吉備中央町には、吉備高原都市という計画都市が、兵庫県側には大型放射光施設SPring-8がある播磨科学公園都市がある。
今回の“安定岩盤”の証明で、こうした都市構想の動きが加速されるという社会的な影響・余波の可能性もあるかもしれない。
ちなみに、10月からTBSテレビ日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』がスタートする。小松左京原作「日本沈没」は、日本列島が地殻変動で海中に沈むという日本存亡の危機を主題に、TVドラマ、映画、アニメなどでこれまで何度もリメイクされ、原作の構想の壮大さがそのつど再評価されている。本格的なディザスター・ドキュドラマとして、最新の科学的知見を取り入れて、吉備高原が“生き残る”展開があればおもしろいかも。
岡山大学:日本列島の、過去1億1000万年間の大陸移動を明らかに 災害に強い地域を検討する上で重要な知見
〈2021. 08. 15. by Bosai Plus〉