開館した「みやぎ東日本大震災津波伝承館」

地域の防災力向上や被災地振興などにつなげる目的も担う

●被災3県運営の伝承施設で最後の開館 未来へ記憶を届ける

 宮城県石巻市の「石巻南浜津波復興祈念公園」内に「みやぎ東日本大震災津波伝承館」が6月6日、開館した。伝承館は、東日本大震災の記憶と教訓を後世に伝える祈りの場として国などが整備した祈念公園の中核的施設として位置づけられている。石巻南浜津波復興祈念公園は去る3月28日に開園し、伝承館もこれに合わせて開館予定だったが、宮城県での新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、開館を見合わせていた。

 伝承館は「かけがえのない命を守るために、未来へと記憶を届ける場」とすることをコンセプトとして、9つのカテゴリ・コーナーで、パネル展示や映像による東日本大震災関連の資料・記録を公開・構成している。津波の怖さ、避難の大切さを記録映像で訴えるシアター「くり返さないために」、東日本大震災発災時の緊急対応から津波被害、そして復興の歩みなどを示すパネル展示、被災者らのインタビュー映像視聴、震災語り部による各地の震災遺構・伝承施設の紹介コーナーなどだ。

 みやぎ東日本大震災津波伝承館は、屋内直径約40mのガラス張り鉄骨平屋、延べ床面積約1300平方mの淡麗なたたずまいで、国が建設し、宮城県が展示物管理運営を担う。月曜日や年末年始などを除く午前9時から午後5時まで開館、入館料は無料。
 岩手、宮城、福島の被災3県が運営する震災伝承施設のなかで最後の開館となる。

●石巻南浜津波復興祈念公園 かつての市街地に再生

 石巻南浜津波復興祈念公園は、宮城県、さらには被災地全体のかなめとなる復興祈念公園として、国が主体となって石巻市の沿岸部に整備された。この地だけではなく東日本大震災で失われたすべての生命(いのち)に対する追悼と鎮魂の場となるとともに、東日本大震災の記憶と教訓を後世に伝える拠点として開設された。かつて市街地であったこの地に再び人びとが集い、人と人との絆、つながりを築いていくことにより、東日本大震災からの復興の象徴としようというもの。

P5 2 「石巻南浜津波復興祈念公園」全景(同HPより) - 石巻南浜津波復興祈念公園内に<br>「みやぎ津波伝承館」開館
P5 3 「石巻南浜津波復興祈念公園」全図(同HPより) - 石巻南浜津波復興祈念公園内に<br>「みやぎ津波伝承館」開館
タイトルカット画像:開館した「みやぎ東日本大震災津波伝承館」、上:「石巻南浜津波復興祈念公園」全景、下:同全図(同HPより)

 菅 義偉首相は、昨年(2020年)12月に宮城県、岩手県を訪問、宮城県東松島市で、復興再生多目的施設を視察、石巻市の石巻南浜津波復興祈念公園で、献花及び黙とうを行い、復興状況と公園概要の説明を受けた。同日午後には、岩手県陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で献花・黙とう、さらに宮古市田老地区を視察している。

P5 4 2020年12月10日、「石巻南浜津波復興祈念公園」を訪問、説明を受ける菅首相(首相官邸HPより) - 石巻南浜津波復興祈念公園内に<br>「みやぎ津波伝承館」開館
2020年12月10日、「石巻南浜津波復興祈念公園」を訪問、説明を受ける菅首相(首相官邸HPより)

 ちなみに国土交通省東北地方整備局や青森、岩手、宮城、福島の各県などでつくる「震災伝承ネットワーク協議会」は、「教訓・伝承の道『3.11 伝承ロード』」の形成をめざし、震災伝承施設として271件を登録している。教訓伝承のほか、地域の防災力向上や被災地振興などにつなげる目的もある。

>>宮城県:みやぎ東日本大震災津波伝承館

〈2021. 06. 20. by Bosai Plus

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