「防災女子の会」からの提言書を小此木防災担当大臣に手交(5月17日、内閣府HPより)

内閣府(防災担当)全職員147名に占める女性職員はわずかに5名、
避難所のリーダーにも女性はいない……

●「 女性の視点」を活かし、かつ「意思決定」から排除してはならない

 内閣府防災担当と、男女共同参画局の女性職員を中心とした「防災女子の会」が去る5月17日、災害時における女性のニーズや課題とその対応策についての提言を小此木八郎防災担当大臣に行い、内容を公表した。
 提言は「女性の視点に立った被災者支援の推進」と「女性の視点を組み込むための防災担当の体制強化」の2章にまとめられており、多様な人びとへの配慮のために、まず女性の視点に立って災害対応を見直すことが必要だとしている。

 近年“ジェンダーギャップ”が世界的にも注目を集め、わが国の男女格差の大きさが大きな課題となっている。防災分野においても、避難所運営をはじめ、地方防災会議委員に占める女性の割合が少ないことから、「女性視点の欠如」はもとより、結果的に意思決定プロセスからの女性排除が問題化している。提言本文は、次のように始まる――

 「世界を変えたい。この思いで提言する。本当につらいことは、津波のように一瞬で我々を飲み込み、ほとんど何もさせてくれない。言うまでもなく、巨大な自然災害への対応は人間にとって極限状況になる。だからこそ、国民の総力を挙げて立ち向かいたいと思う」――
 導入部の一部表現は、本紙特別企画で取り上げた「防災・減災、国土強靭化 新時代」の提言と呼応しているが、その後に「しかし、」と続く。

 「現実は理想とは程遠くはないだろうか。2020年12月、内閣府防災担当と男女共同参画局の女性職員による『防災女子の会』を結成した。結成当初、内閣府防災の全職員147名に占める女性職員はわずかに5名。この状況は自治体においてもさほど変わらない。災害時に国民の生命をつなぐ避難所のリーダーにも女性はほとんどいない……」。

P3 1 「防災女子の会からの提言」(冒頭の一部より) - 内閣府「防災女子の会」が提言<br>「世界を変えたい」
「防災女子の会からの提言」(冒頭の一部より)

●日本防災士会 女性防災推進局が「防災女子の会」と問題意識を共有

 提言は具体的には、避難所運営で女性と男性のニーズの違いが配慮されていないとして、地方防災会議の委員に占める女性の割合を高め、地方防災計画の作成段階から女性の視点に立った対策を取り入れる必要があるとした。また、内閣府男女共同参画局が5月にまとめた「男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン」を踏まえ、内閣府(防災担当)が2016年に策定した「避難所運営ガイドライン」を見直すべきとした。

P3 2 内閣府防災職員として働くことのやりがい・メリット(複数回答有) - 内閣府「防災女子の会」が提言<br>「世界を変えたい」
提言資料より「内閣府防災職員として働くことのやりがい・メリット(複数回答有)」

 女性の視点を防災対策に組み込むための体制強化では、防災に関わる女性職員の増員、内閣府防災担当と男女共同参画局の恒常的な協力体制の強化などを求めた。そして、育児・介護の代替サポートによって性別、世帯構成、年齢などに関係なく、だれもが働きやすい職場環境を実現する必要があると訴えている。

 ちなみに、日本防災士会女性防災推進局は去る4月28日に、内閣府「防災女子の会」とオンライン顔合わせ会を開催し、問題意識を共有している。

>>内閣府(防災担当):防災女子の会からの提言

〈2021. 06. 16. by Bosai Plus

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