伝える側(国・自治体)と伝達するメディア、
そして地域防災の各主体が防災情報の理解・認識を共有
【 防災気象情報の伝え方、受けとめ方、用語理解の共有を 】
●「 梅雨入り・梅雨明け」は防災情報理解の第一歩 防災用語のおさらいを
今年もいよいよ出水期を迎える。今期は西日本を中心に、記録的な早さで梅雨入りが進んだ。沖縄と奄美は平年より1週間ほど早く5月5日に梅雨入りした。九州南部は史上2番目の早さで5月11日に梅雨入り、15日、16日には九州北部から東海にかけて相次いで梅雨入りした。いずれも平年より20~22日早く、近畿と四国は梅雨入り発表史上でもっとも早く、九州北部、九州南部、中国、東海は2番目の早さだったという。
関東甲信でもこの時期、梅雨本番のような曇天と蒸し暑さが続いて梅雨入りかと思われたが、その後は好天となり、5月末日現在、“持ち直した感”がある。
気象庁による「梅雨入り・梅雨明け」の判定はあくまで気象予測からの目安だ。気象庁によれば、「梅雨は、春から夏に移行する過程で、その前後の時期と比べて雨が多くなり、日照が少なくなる季節現象。梅雨の入り・明けには、平均的に5日間程度の『移り変わり』の期間がある」としている。
気象庁が1951年以降、梅雨入り・明けデータとして掲載する期日は、『移り変わり』の期間のおおむね中日を示しているという。
なお、気象予測をもとに行う梅雨の入り明けの速報とは別に、梅雨の季節が過ぎてから、春から夏にかけての実際の天候経過を考慮した検討を行い、その結果を統計値として確定している。ちなみに出水期とは、「梅雨期などの集中豪雨や台風により川が増水しやすい時期を指し、一般的には6月から10月頃が該当」としている。
● 防災気象情報の伝え方改善に向けて、『防災用語ウェブサイト』を開設
国土交通省と気象庁は去る5月24日、防災気象情報の伝え方の改善に向けての今出水期からの取組みを公表した。その概要は本紙5月1日号(No. 257)でも伝えたが、主な取組みとしては、「線状降水帯というキーワードを使った“顕著な大雨”への注意喚起を開始」、「台風等が接近した際に、どのような災害が想定されるのかなどがより詳細に伝わるよう呼びかけ方を改善」、「国が管理する河川の洪水予報における水位や流量の予測情報の提供について従来の3時間先から6時間先までに延長」などがある。
これに加えて、『防災用語ウェブサイト』の新設が提言されている。防災気象情報の伝え方改善に向けては、有識者による「防災気象情報の伝え方に関する検討会」や「水害・土砂災害に関する防災用語改善検討会」(いずれも座長は田中淳・東京大学名誉教授)で課題や改善策が検討された。このうち「防災用語改善検討会」が提言したのが『防災用語ウェブサイト』の新設だ。
提言は、防災情報を伝える上での課題として、「防災用語の専門性が受け手の理解をむずかしくしている」とし、「防災用語に普段から同じ説明を付して理解を深め、災害時には求められる行動を示す一般的な表現に言い換えて伝える」、「イラスト・動画などの工夫で用語のわかりやすい伝達・説明を図る」とした。
これを受けて国土交通省は今出水期の6月を期して『防災用語ウェブサイト』(当面試行版の予定)を開設することを決めた。なお本紙は、同開設日について国土交通省河川計画課に具体的な日付け・サイトURLを問い合わせ中だが、5月31日現在、未定。
『防災用語ウェブサイト』は、とくに地域防災を担う防災士などの活動家にとっては、防災情報を住民などの受け手にわかりやすく伝え、適切な防災行動を促すための重要なツールになる。また、防災情報の発信者(国、自治体)とメディア(報道機関等)、そして地域防災活動家間での情報共通・状況認識の共有を促すことになる。
そのためにも、『防災用語ウェブサイト』はパソコンやスマートフォンなどで、だれでもすぐに防災用語の意味や伝え方などを検索できるサイトでなければならない。
>>国土交通省:防災用語ウェブサイトについて(水害・土砂災害防災用語改善検討会)
〈2021. 06. 10. by Bosai Plus〉