救急艇 ベイエリア大型イベント 救急搬送に備える
病院船導入をめざすMHI――社会実装への試み、
オリパラを想定してオープンクルーザー救急艇で訓練
●コロナ禍の海上救急搬送を想定して、救急艇披露と訓練
新型コロナ感染症の蔓延で2020年の開催が2021年7月23日~9月5日開催に延期された東京2020オリンピック・パラリンピック(以下、「オリパラ」)――その開催には依然として不透明さが漂うが、開催日まで2カ月を切った去る5月26日、東京都江東区豊洲で「救急艇」の社会実装に向けた救急艇披露記者会見と搬送訓練が実施された。
その趣旨は、オリパラ期間中、交通渋滞などで陸上救急が困難になった際に救急搬送が必要な患者を、ベイエリアの競技会場から昭和大学江東豊洲病院へ搬送しようというもの。主催者は公益社団法人モバイル・ホスピタル・インターナショナル(砂田向壱代表理事。以下、「MHI」)で、MHIはこれまで、2020オリパラ開催までの“病院船”導入をめざしてきた。
オリパラ競技会場が集中する有明・台場エリアで、暑い夏場に想定される熱中症をはじめ、救急搬送が必要な患者や選手、大会関係者を救急車以外で病院まで搬送する手段として、海上で救急救命活動を行う救急艇を導入する。
MHIはこの救急搬送活動に備える研究用救急艇として、オープンクルーザーを採用。5月26日は、その救急艇モデルの披露と搬送訓練を紹介するものだった。救急艇モデルは、新型コロナウィルス禍において搬送時の小型艇室内の三密状態を避け、また猛暑時期であることを考慮してオープンクルーザーを採用。救急艇に乗船する医師、救命士は、救急艇社会実装協議会参加大学の有志で、海上救急のあり方を研究している。
MHIは東日本大震災後の設立以来約10年間、病院船(災害時多目的船)導入をめざして、災害時等の医療提供体制の整備に関する船舶利活用推進法の必要性を訴え続けてきた。2018年6月の米海軍病院船「USNSマーシー」(7万トン)東京寄港も、MHIの日米両政府への働きかけの成果だという。
救急艇の社会実装についても東京消防庁と「船舶を用いた患者搬送の協定」を締結、水路の多い東京における災害の多様性に備える試みとなっている。協力体制として、救急艇社会実装協議会が設立され、日本医科大学、帝京大学、杏林大学、昭和大学等医学部と日本体育大学大学院、国士館大学大学院などの医師や救命士がボランティアとして救急艇に日々乗り込み、海上搬送技術の向上に貢献する。
MHIでは救急艇社会実装により、大型イベント大会での関係者や地域の安全確保を支援するとしている。
〈2021. 06. 02. by Bosai Plus〉