ばちのアップ

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文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)

 1995年(平成7年)1月17日早朝5時46分、歴史的大地震が発生しました。兵庫県淡路島北部を震源とする「兵庫県南部地震」です。マグニチュード(以下、M)7.3、最大震度は当初6と発表されましたが、その後震度7と訂正されました。これは当時の震度階級0~7(8段階)のうち震度6までは計測震度計で観測が可能でしたが、震度7は現地調査をしなければならず判定に時間を要したためです(現在の気象庁の震度階級は10段階。計測震度計で震度7の速報が可能)。
 震度7は淡路島の北淡町、一宮町や津名町の一部、神戸市須磨区から西宮市、宝塚市の帯状の地帯でした(「阪神・淡路大震災から20年」特設サイト 観測データ・解析結果 参照)。その後、兵庫県南部地震は激甚災害に指定され、未曾有の災害を引き起こして多数の犠牲者を出したことから2月14日の閣議決定で「阪神・淡路大震災」と名付けられました。

 地震直後に上空から撮影された火災の煙や全壊したビル、陥没した道路、約600mにわたり橋脚が倒壊した阪神高速神戸線などの映像は、日本全国に大きな衝撃を与えました。犠牲者は全国で6434名、行方不明者3名、負傷者4万3792名、住家全壊10万4906棟、住家半壊14万4274棟という膨大な被害でした(総務省消防庁ホームページ、以下HP 阪神・淡路大震災について 確定報 参照)。また住家以外にも、公共建物1579棟、文教施設1875カ所、道路7245カ所、河川774カ所、ブロック塀など約2468カ所の被害が報告されています。

 兵庫県が10年後の2015年(平成17年)に発表した阪神・淡路大震災の死者にかかる調査についてには旧被災12市4町(13市)を対象にした調査データが掲載されています。兵庫県の死者数は6402名(全国6434名中)、そのうち49.6%が65歳以上でした。そして窒息と圧死によって亡くなった方が直接死(5483人)死因の72.57%と大半を占め、建物倒壊や下敷きが原因と考えられています。また、被害を受けた建物のほとんどは1981年(昭和56年)以前に建てられた旧耐震基準の建築物だったことも話題となりました。

 国は阪神・淡路大震災を契機に1997年(平成9年)10月に「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」を制定しました。同法律は数年ごとに改正を繰り返し、2013年(平成25年)には不特定多数の人が利用する大規模建築物等(要緊急安全確認大規模建築物)と都道府県、市町村が指定する避難路沿道建築物や都道府県が指定する防災拠点建築物(要安全確認計画記載建築物)の所有者に対し、耐震診断と診断結果の報告義務付けと結果公表を定めた「改正耐震改修促進法」が施行されました。
 その後、2019年(平成31年)施行の一部改正では、避難路沿道の一定規模以上のブロック塀について建物本体と同様に耐震診断と結果報告の義務付けをしています(国土交通省HP 住宅・建築物の耐震化について参照)。

料理名:ばち汁(兵庫県)

 兵庫県一帯は、平安時代以前は各豪族が支配する土地であり、多くの古墳が発見されています。その後、摂津(西部)、播磨、但馬、淡路、丹波(氷上郡・多紀郡)の5カ国が置かれ、その頃には「大輪田の泊」という瀬戸内海とを結ぶ港も造られて要港として栄えました。今の神戸市兵庫区周辺には当時「武器を収める倉=兵庫」があり、それが兵庫という名前の由来になったという説があります(兵庫県HP 県域の歴史)。

ばち汁 1024x718 - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉<br> 【第51回】 兵庫県「ばち汁」
兵庫県「ばち汁」

 今回ご紹介する「ばち汁」とは、そうめんの一部分である「ばち」を使用して作る汁もの料理です。そうめんは5カ国のうちの播磨(播州地方)との関係が深く、兵庫県揖保郡太子町の斑鳩寺(いかるがでら)の1418年(応永25年)9月15日の寺院日記に「サウメン」の文字があり、播州地方で最も古いそうめんの記述だと言われています。
 手延べそうめんは二本の管(くだ)に麺を八の字に掛けて少しずつ伸ばし、最後にUの字になったところを切り落として完成です。このUの字部分が「ばち」です。形が三味線を弾くバチに似ていることから名付けられました(揖保乃糸HP 揖保乃糸の歴史参照)。
 本格的に播州でそうめん作りが始まった江戸時代の安永頃(1771年〜1780年)からは農家がこぞってそうめん作りを行うようになり、粗悪な品質も出回るようなってしまいました。そこで龍野藩、林田藩、新宮藩内のそうめん屋が品質に関する取り決めを記した文書「素麺屋仲間取締方申合文書」を作り、違反すれば違約金二両を支払うことと定めました。一定以上の品質を保つために厳しい品質管理が行われていたのです。

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そうめんばちパック - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉<br> 【第51回】 兵庫県「ばち汁」
そうめんばちパック

★何度も熟成させる手延べそうめん

 揖保乃糸HPには明治時代の手延べそうめん作りの様子がイラストになって紹介されています。小麦と塩水を捏ねて桶に巻き込み、次に油をつけて熟成させて伸ばしては寝かし伸ばしては寝かしを繰り返して1㎝→6mmと麺紐を細くさせていき、さらに3回目の熟成の後に二本の竹管に八の字にかけます。
 4回目の熟成が終わった後に麺紐を50㎝程度に伸ばしてもっと細くして5回目の熟成になります。その後、乾燥させて切りそろえ、束にして箱詰め(およそ300把)にします。計量で約18㎏にした後に検査をして出荷です。作業工程をルーティン化して厳守することで誰が作っても一定以上の品質が維持できるようになりました。

 今回は農林水産省HP 子どもの食育日本各地の郷土料理 兵庫県「ばち汁」や、明石市学校栄養教職員研究会HPの「ばち汁」を参考に作りました。1~2分ほど茹でたそうめんの「ばち」を、だし汁にネギや人参、干し椎茸などを入れて味をつけた汁に入れるだけです。具は豆腐を入れたり、鶏肉や豚や鶏のひき肉を入れたりしても美味しくなります。醤油味もあれば味噌味もあるそうです。
 私は干し椎茸のうまみを生かした醤油味にしてみました。細くて喉にもするっと入るそうめんですが、特にそうめんばちは短くて、小さい子でも飲み込みやすいと思います。2月は寒さも本番の「大寒」の時期です。ばち汁を食べてお腹の底から体を温め、元気を出して冬を乗り切りましょう。

〈2021. 2. 07.〉

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