防災士など地域防災活動家も知っておくべき
感染症と避難所運営の課題と知恵
防災士など地域防災活動家も知っておくべき感染症と避難所運営の課題と知恵
●防災学術連携体の「市民への緊急メッセージ」
防災減災や災害復興に関わる58学会のネットワークである防災学術連携体の幹事会が去る5月1日、新型コロナウイルス感染症と自然災害の複合災害に対する警戒を呼びかける「市民への緊急メッセージ ~感染症と自然災害の複合災害に備えて下さい~」を公表した。
メッセージは、感染リスクを考慮した避難が必要、地震・火山災害との複合災害への備え、気象災害との複合災害への備え、熱中症への対策も必要と訴え、被災者や自主防災組織、ボランティア、自治体職員、医療・福祉関係者などへの十分な配慮が必要とするいっぽう、避難指示・勧告が出た場合、ためらわずに避難するべきとしている。
●東京大学「災害対策トレーニングセンター(DMTC)」の対策ジレンマ集
東京大学大学院情報学環・学際情報学府および東京大学生産技術研究所が2018年10月に設立した「災害対策トレーニングセンター(DMTC)」(センター長:目黒公郎教授、DMTC:Disaster Management Training Center)では、新型コロナ蔓延下での避難所運営で、どのようなことをとまどい、判断に迷うのかをまとめた「ジレンマ集」を作成している。
例えば行政は避難所の増設を試みるとき「住民に対し増設した避難場所・避難所の場所・避難経路等を事前に周知徹底することができるか?」などの”ジレンマ”を、避難、避難所開設、運営などに分類して集めていて、想定外を想定する訓練ともなっている
●人と防災未来センターの「事前準備チェックリスト -手引き版-」
阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センターの高岡誠子研究員が、災害医療と看護の専門家として、避難所感染症対策を実施する自治体実務者の視点に立って策定した「手引き」。避難所開設準備などの話し合いで、チェック項目をひとつずつ確認してゆくことで、感染者やクラスター化を可能な限り防げるような避難所運営体制の構築をめざしたという。簡易版のチェックリストで準備・調整事項を確認、手引き版で詳細な方法等を確認できる。
●防災科学技術研究所の「災害時避難に関する情報」
国立研究開発法人防災科学技術研究所・総合防災情報センター・自然災害情報室が運用するCOVID-19状況下における感染症蔓延下での災害時避難対策の促進に向けて、関連した公開情報を集約して発信している。
●小山真紀:感染症流行下における水害発生時の防災・災害対策を考えるためのガイド
岐阜大学流域圏科学研究センター・小山真紀准教授がグループ研究をとりまとめた。一般的な水害対策に加えて考えるべきこと、一般的な水害対策との違いにフォーカスし、避難、避難所運営などに最善を尽くすためのガイドをめざしたという。対象者として、行政、地域コミュニティ、個人、事業所、支援者・支援団体、地域医療・地域介護など関係者を想定。
●JVOAD:新型コロナウイルス 避難生活お役立ちサポートブック
全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)が、避難生活での感染症の予防や蔓延防止のために、「誰でもできるちょっとした配慮」をわかりやすくまとめた資料を公開している。災害ボランティアの支援活動の一助にと、支援者と避難者に向けてまとめたもの。
わが国ではCOVID-19感染症対策として発せられた緊急事態宣言の、一部地域の解除がこのほど発表された(5月14日)。海外でもCOVID-19のピークアウトが報道され、経済活動の再開に向けて規制緩和が伝えられている。英国ではコロナ対策のためのスローガンを「ステイ・ホーム」(Stay Home)から「ステイ・アラート」(Stay Alert)に変更するという。
しかし、風水害、地震・津波、噴火、熱中症などの自然災害との複合災害が想定されるわが国では、感染症の第2波、第3波に備えて、いつでも「オン・アラート」(On Alert=いつでも備え)であるべきことは言うまでもない。
私たちがこれまで幾度も大きな災害教訓を得てきた津波のように、パンデミックでは、後続波が押し寄せることもあるのだから。
〈2020. 05. 16. by Bosai Plus〉