徳島県 いも餅

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文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)

 徳島県は台風の影響を受けやすく、南国の高温多雨な気候もあり昔から風水害が繰り返し発生しています。徳島県と徳島地方気象台が古文書や気象台の資料などを基に作成した「徳島県自然災害誌」によれば、長雨の記録は「続日本紀」(国立公文書館ホームページ、以下HP参照)に書かれた704年(慶雲元年)の邦暦4月27日(西暦6月5日) 「阿波等4国苗損ず 並びににぎわし救う」まで遡ることができます。886年(仁和2年)には、「8月(9月)大洪水で河道岩津の南に変る」とあり、吉野川の流路が変わったとの記録が残っています。
 また三大飢饉の一つ1732年(享保17年)「享保の飢饉」では、春から6月まで雨が続く冷温多湿な気候になり稲の成長にも悪影響を与えたばかりか、稲の害虫「うんか(鳥取県病害虫防除所HP参照)」の大発生によって西日本で稲の収穫ができずに餓死者を大勢出しています。
 徳島県自然災害誌は徳島の飢饉の記録を古文書([ ]内は文献名)から引用し、「[阿波志]夏二州蝗傷禾63950石 12月以て聞す。[野村文書]秋うんか大発生下灘飢人7000四方原200追々餓死。[麻植郡誌]50年来の大飢きん藩の財政窮乏。[神領村誌]485人に麦を借す」と掲載しています。害虫による被害の甚大な様子や餓死者や飢えた人々が多く出たこと、各村で困窮した様子が分かります。国立公文書館HP「享保の飢饉」には幕府が把握していただけでも餓死者1万2000人余、死亡した牛馬1万4000頭以上とあるものの、その他に筑前福岡藩領だけでも餓死者が6~7万人との推計があることから実際の犠牲者数は膨大だったのではないかとの内容が書かれています。

 現代になると風水害、主に台風の様子が詳細に記録されています。1945年(昭和20年)の終戦直後に日本を襲った超大型台風の「枕崎台風」(916.6hPa。鹿児島県枕崎での数値)は徳島県に大きな被害をもたらしました。高知県で降った大雨が吉野川に降り注ぎ、池田9.3m、岩津7.6m、新町5.1mと高い水位になって大洪水を引き起こし、徳島県では死者44人、傷者18人、不明者3人、家屋全壊1166軒、半壊1417軒、流失30軒、床上浸水1536軒、床下浸水1324軒となり、徳島市では戦災後に建てられた仮小屋がほぼ倒壊しました(徳島県自然災害誌【684~1950】参照)。
 また1976年(昭和51年)の台風17号は全国で記録的大雨となり洪水や土砂災害が相次ぎました。徳島県では7日間雨が降り続き、徳島の期間降水量は825.0㎜、剣山1837.5㎜、日和佐475.5㎜、木頭村日早(四国電力)2781㎜と日本の観測史上最大の記録を更新し、死者10人、負傷者9人、罹災世帯4067世帯、家屋全壊・流失187棟、家屋半壊・一部破損103棟(徳島県自然災害誌【1970~1986】参照)、全国では死者161人、行方不明者10人、負傷者537人、住家全壊1669棟、半壊3674棟、床上浸水10万1103棟、床下浸水43万3392棟となり、復旧に時間を要する大災害となりました(気象庁HP 災害をもたらした気象事例 昭和20~63年参照)。

DSCF8947いも餅 大きめトップ用 - 〈 復興わがまちご当地ごはん! 〉<br>【第46回】 徳島県「いも餅」
徳島県 いも餅

●料理名:いも餅(徳島県)

 今回ご紹介する郷土料理は「いも餅」です。いもは日本各地で収穫できるポピュラーな野菜であることからじゃがいも、さつまいも、さといもと様々な種類のいも餅レシピがあります。その中でも徳島県のいも餅は、さつまいもの餅の中にあんこが入った甘いおやつです。
 さつまいもの歴史は古く、紀元前にメキシコ付近で生まれ、日本へは1600年ごろに中国から入ってきました。琉球(沖縄)から薩摩(鹿児島)へ伝わったので「さつま(薩摩)いも」と呼ばれるようになりました。さつまいもが注目を集めるようになったのは上記でご紹介した享保の飢饉の時です。西日本の各地域で飢えのためにバタバタと死者が出た中、薩摩藩だけは救荒作物のさつまいもを栽培していたため餓死者が出ませんでした。時の八代将軍、徳川吉宗は早速飢饉対策として儒学者・蘭学者の青木昆陽に小石川植物園や千葉県でさつまいもを試作させて栽培に成功します。以後、吉宗は東日本にさつまいも栽培を促進して飢饉を防いだそうです。

 さつまいもの栽培には20℃~30℃の気温が適しており、徳島県はさつまいも栽培にまさにぴったりの気候です。北東部(鳴門市、北島町、松茂町、徳島市)で栽培される、味が優れて形も良いさつまいもが1980年(昭和55年)に「なると金時」と命名されました。水はけがよい海水ミネラルを含んだ砂地で栽培することで一大ブランドのなると金時が育つのです(全国農業協同組合連合会 徳島県本部 かんしょ「なると金時」参照)。

★柔らかく滑らかで自然な甘さ

 今回のレシピはJA里浦HP「いももち」を参考にしました。レシピには「もち粉」とありますが、売り場には上新粉と白玉粉しかなかったため上新粉を購入して使っています。
 後で調べたところによれば、モチモチした食感のお菓子には白玉粉、歯切れの良い「ういろう」などを作る時には上新粉が向いているようです。もち粉の代わりになるのは、本当は白玉粉なのかもしれません。ともかく上新粉を使っていも餅づくりにチャレンジです。

 レシピではさつまいもの皮をむいて水に浸してアクを抜いたら、蒸し器に入れます。蒸し器がない時はふかしいも作りに炊飯器が便利です。さつまいもを適度に切り、1㎝ほどの水と一緒に入れて炊飯モードをスイッチオン。
 一方、上新粉は参照したレシピですとさつまいもに加えて後から蒸すのですが、炊飯器を途中で開けられないために別に蒸すことにしました。
 フライパンの中に深さのある皿を裏返して置き、さらにその上にお皿を乗せて上新粉を練って作った大きな塊まるまる一個を入れ、周りに水を2~3㎝注ぎます(上新粉のお団子に水が入らないようしてください)。そして蓋をして中火から強火で12分~15分くらい蒸しました。その後蒸しあがったさつまいもと上新粉のお団子をすりこぎ棒で突いて練るのですが、ういろう並みにしっかりした上新粉の塊はプリプリと弾力がありすぎて、なかなかさつまいもと一緒に練ることができません。仕方がないのでマッシュポテト用の器具を使ってマッシュしながら練り上げました。

 最後にあんこをくるんでおまんじゅうの形を整え、砂糖を混ぜたきな粉をまぶします。あんこ×さつまいも×砂糖入りきな粉なので甘すぎるかなと恐る恐る食べてみたところ意外にもさっぱりと優しい甘さ。滑らかで柔らかくて食べやすい!日ごろのお茶請けにいかがでしょうか。

〈2020. 05. 07.〉

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