3時間ほどで首都圏に降灰到達、首都機能マヒも
中央防災会議・防災対策実行会議「大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ(WG)」(主査:藤井敏嗣・東京大学名誉教授)は、富士山をモデルケースとした噴火時の首都圏を含む広域な地域における降灰による被害想定、シミュレーションをもとにした応急対策を検討するために2018年8月に設置され、4回の検討会議を経て、去る4月7日、報告をまとめた。
「大規模噴火時の広域降灰対策について―首都圏における降灰の影響と対策― ~富士山噴火をモデルケースに~」と題された報告は、大規模噴火時の広域降灰対策の基本的な考え方について、富士山の宝永噴火規模の噴火をモデルケースにして検討したもの。
とくに都市機能が集積した首都圏等において、広域に堆積する火山灰が交通機関やライフライン施設、経済活動や社会生活にどのような影響を及ぼすのかが明らかではなく、各主体の実施すべき対応や降灰対策の基本的な考え方が整理されていないことから、国や指定公共機関、地方公共団体等が大規模噴火時の降灰対策の検討を行う際の前提となる降灰分布とそれによる交通機関やライフライン等への影響が示されている。
降灰による主な影響をみると、噴火が約2週間続き、東京都心方向に風が吹くケースでは、15日目の累積降灰量は、東京都新宿区10cm程度、千葉県成田市3cm程度、横浜市2cm程度、神奈川県相模原市30cm程度(ただし、天候や風向、風速により、各地で積もる量は大きく変わる)。
都心方向に風が吹くと、噴火から3時間で首都圏に灰が到達。鉄道は微量でも運行できなくなり、雨が降れば電気設備に付着して停電が起きる。灰の量は、東日本大震災で出た災害廃棄物の10倍近い4.9億立方mに達する。
現在、富士山の噴火の兆候はないが、過去の周期などから、噴火が宝永噴火以来長期にわたってないことを、むしろ「不思議」とする専門家は少なくない。
>>内閣府(防災担当):大規模噴火時の広域降灰対策検討ワーキンググループ
〈2020. 04. 16. by Bosai Plus〉