講演を自宅で聞いてパワポ資料も見られる――
パンデミック後の“シンポ変革”を語るきっかけに
●本項は、シンポ・リポートではなくて……
パンデミック後の“シンポのあり方”について
防災減災や災害復興を進めるための研究にはどういう分野がかかわってくるのだろうか――地震、津波、火山などの災害事象ごとの研究から、地球観測、気象、地盤、水工学、土木、建築、耐震、耐風、火災、救急医療、環境衛生、都市計画、海洋、地理、経済、情報、エネルギー、環境、歴史などなど、多くの研究分野が関係する。そうした研究成果は社会や行政に理解され納得され、人びとや政府がよりよい方向に動かなければ、つまり、社会実装化されなければ、問題は具体的に先に進まない。
いっぽう学問は年々専門分化が進み、各分野の研究は深まるが、研究は社会や他分野から離れがちだ。重要な問題を俯瞰的に考察し、分野や組織を超えて自由に議論し、垣根を超えてより分野横断的な方向を見いだす努力が求められている。そこで、専門分野の枠を超えて、関係する学会や研究者が連携しつつ議論し、社会や行政の理解も深め、総合的、持続的かつ具体的に行動しなければならない――そうした問題意識から、2016年1月に結成されたのが、防災学術連携体である。
その防災学術連携体が、低頻度巨大災害に関わる自然事象の発生の可能性と社会への影響について、日本学術会議防災減災学術連携委員会、土木工学・建築学委員会低頻度巨大災害分科会と共催で、去る3月18日に第9回防災学術連携シンポジウム「低頻度巨大災害を考える」の開催を予定した。
しかし、折も折、新型コロナウイルス感染症の拡大にともない、その防止への協力のため、シンポジウム当日は発表者と関係者のみが会場の日本学術会議に集まり、発表の様子はインターネットを使って同時中継することになった。
残念な事態ではあったが、ただ、一般聴講者にとっては、今後のシンポジウムでも期待したい大きな付加価値的なサービスがあった。ウェブ中継でその模様を同時聴講できたことはもちろん、事後に同主催者が、すべての講演者の講演の動画と、プレゼンテーションで使用したパワーポイント資料をそのホームページで公開したのだ。
今後、公益性の高いシンポジウムをこの手法で記録公開するとなると、一般聴講者はわざわざ会場に出向かなくても貴重な講演を聴講できるという大きなメリットが生まれる。そのメリットはとくに、日本全国からオンラインで聴講できるところにある。まさに、災い転じて福、「Social Distancing」が今後のシンポジウム、セミナーのあり方を根底から変革する可能性を示したということにはならないか。
もちろん、オンライン講演会はこれまでも数多くあったわけだが、たまたま「COVID-19」というわが国にとっての“国難”、世界史的にも重大な危機の渦中での「低頻度巨大災害」シンポジウムであればこそ、このシンポジウムが、これを機に“パンデミック後の世界”への変革・希望を語る好機を提供してくれたとも言えそうだ。
>>第9回防災学術連携シンポジウム:「低頻度巨大災害を考える」
〈2020. 04. 16. by Bosai Plus〉