野沢菜油炒め

Photo by くにろく

文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)

 信州善光寺は日本最古の仏像と伝えられる一光三尊阿弥陀如来をご本尊とし、642年の創建以来約1400年の歴史を刻み、今もなお年間600万人が訪れる長野県を代表する寺院です(善光寺のホームページ、以下、HP参照)。
 1847年(弘化4年)5月8日、この年は7年に一度の御開帳の時期に当り、どの宿も満員で7000~8000人が宿泊していました。夜10時、すさまじい音とともに突然マグニチュード(以下、M)7.4の内陸直下型の大地震「善光寺地震」が発生します。
 震源地は長野市(東経138.2度、北緯36.7度)で、長野盆地の西側の活断層が逆断層運動(西側の山地が盆地に乗り上げる)を起こしたのです。また、この活断層は1000~2000年に一回の頻度でM7クラス以上の地震を起こしており、善光寺地震は近年で一番新しい当活断層のM7クラスの地震だと考えられています(内閣府防災情報のページ「報告書(1847 善光寺地震)」参照)。

 地震により善光寺はご本尊を安置する本堂の内陣や、大勧進の万善堂、護摩堂、聖天堂など7カ所が大きく破損し、善光寺領では民家の2385戸が倒壊、松代(まつしろ)藩士の家は全壊38戸、半壊286戸、大破654戸、城下町の民家は、全壊176戸、半壊105戸、大破114戸の被害を受けました(長野市HP「善光寺地震をご存じですか?」参照)。
 夜間の地震だったため倒壊家屋の下敷きとなる者が多数出たほか、土地勘のない観光客の避難は混乱を極め、その後発生した火災によって犠牲者はさらに増加しました。
 余震も翌日にかけて大小80回、その後1年以上も続き、土砂災害や河川の堰き止め、決壊で被害は拡大し、善光寺地震の犠牲者数は1万人前後にのぼるといわれています。

 被害の様子が現代にも細かく伝わっているのは、松代藩の功績です。長野市松代町は明治時代までの250年間、松代藩真田家十万石の城下町として栄え、藩主は善光寺の外護職(げごしょく。保護する役目)に就いていました。現在でも御開帳の際には松代町が本堂前の大回向柱の用材を寄進しています。
 当時、松代藩真田信濃守(さなだしなののかみ)から御用番へ宛てた届出の公式記録には、善光寺地震の土砂災害の様子が「山抜崩(やまぬけくずれ)大小4万1051カ所」とあり、どのように分布するかは「信州地震大絵図」(消防防災博物館HP「信州地震大絵図」のページ参照)に示されているとのことです。また松代藩の家老・河原綱徳(かわらつなのり)は長野市信更町の岩倉山や、中条村の虫倉山で発生した巨大な崩落の被害の様子を『虫倉日記』に記しています。

料理名:野沢菜の油炒め(長野県)

 長野県の名物である野沢菜を一年中楽しめる野沢菜漬け。青々としてシャキシャキとした歯ごたえが堪りません。長野県漬物協同組合HPによれば、1756年(宝暦6年)、野沢温泉村の健命寺の住職が京都から「天王寺カブ」を持ち帰り、その後栽培もしたのですが信州ではカブが育たず、しかしカブの葉と茎だけはよく育ち、野沢菜になったそうです。ただし、これは言い伝えであり実際は違うとの説もあります。

 野沢菜漬けには2種類あってスーパーでよく見かけるのは浅漬けで、収穫して2~3日塩漬けすれば完成です。古漬け(本漬け)はべっ甲飴のような色になるまで漬けたもので乳酸発酵が進んでいるため酸味が強いのが特徴です。
 野沢菜と同じアブラナ科アブラナ属の野菜はほかにキャベツ、ブロッコリー、白菜、小松菜があり、アブラナ科の野菜をよく食べるとガンや心疾患を防ぐともいわれています。
 また、野沢温泉観光協会HPには、「野沢菜漬けは、ニトロソアミンという発ガン物質を抑えるのに十分のビタミンCが含まれているそうです。野沢菜漬けは1グラム中60ミリグラムものビタミンCが含まれており、これはどの漬物よりも高い数字です」と書かれています。
 野沢菜漬けをたくさん食べて健康な体作りを目指したいですね!今回はお弁当にももってこいの「野沢菜の油炒め」を長野県の郷土料理としてご紹介します。レシピはベターホームのレシピサーチ 野沢菜の油炒めを参考にしました。

200107 油炒め - 〈 復興わがまち ご当地ごはん! 〉<br>【第42回】 長野県「野沢菜の油炒め」
野沢菜の油炒め

炊きたてご飯に野沢菜の油炒め

 野沢菜漬けは母の大好物で、私が子どもの頃からわが家の食卓にも頻繁に出ていました。子どもの頃はあの歯触りがちょっと苦手でした。今回ご紹介する野沢菜の油炒めは、野沢菜漬けの歯ごたえが苦手な方でも美味しく食べられる簡単アレンジのお料理です。しかもものすごく材料も少なく経済的で、すぐにできます。

 野沢菜漬けをさっと水洗いしてギュッと絞り、包丁で細かく切って、熱したフライパンの上で胡麻油で炒めて最後は白ごまを振りかけるだけ! うーん、簡単すぎてなんだか申し訳ない感じ。ところが、これが一丁前にうまいから驚きです。歯触りもしんなりと食べやすくなります。
 さらに私の個人的なレシピをお教えしますと、これにラー油とお醤油をお好みでちょろっと加えて炒めるのです。ほんのりピリ辛で醤油の香ばしい野沢菜の油炒めになります。これを炊きたての白いご飯にかけて食べてみてください。胡麻油のいい香りが立ち上り食欲をそそります。そして、お弁当のご飯の上に乗せれば昼時にはご飯に味がほどよく染みていい感じです。

〈2020.1.07.〉

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