高潮災害は想定外ではない
地域を知り、災害に学ぶ
都市部への人口集中、地下空間利用の広がり、
浸水被害に対する脆弱性――備え、怠りなく
(*本項は、気象庁広報資料をもとに再編集しました)
高潮被害等により甚大な被害をもたらした伊勢湾台風の来襲から、今年は60年の節目。気象庁はこれを機に、伊勢湾台風60年シンポジウム「台風と高潮」を去る9月14日に東京都千代田区のTKPガーデンシティ竹橋で開催した。
当日は、名古屋出身である工藤彰三衆議院議員が冒頭の挨拶に立ち、地元で語り継がれる台風来襲時の様子とその高潮被害の恐ろしさ、対策の重要性について熱を込めて語った。
続いて行われた講演では、気象庁の室井ちあし・数値予報課長から台風と高潮予測に関わる数値予報技術の推移、磯部雅彦・高知工科大学学長から海岸工学に基づいた高潮対策、また山﨑 登・国士舘大学教授(元NHK解説委員)から防災情報の変遷が紹介された。
シンポジウム後半は、前述の3人の講師に牧原康隆・元名古屋地方気象台長、山口正幸・江戸川区危機管理室長を加えたパネルディスカッションが行われ、高潮災害の特徴が議論されるとともに、ゼロメートル地帯における事前避難計画などが紹介された。
室井氏は「数値予報モデルの改良や数値予報モデルの利用手法の改善等により、台風の進路予報の精度はこの60年で飛躍的な精度向上を達成し、防災気象情報改善、防災体制が充実、台風災害による犠牲者数は激減。しかしながら、都市部への人口集中、地下空間利用の広がり、浸水被害に対する脆弱性も見られ、温暖化の影響で発達する台風が増加するという研究もあり、高潮に対する備えが必要」とした。
磯部氏は「1960年代後半からは高潮災害が激減したが、近年、台風活動が活発化し、将来は地球温暖化も起こる可能性が高い。今後、特別高潮警戒水位の情報が出たときに、どう避難するかは一人一人の問題(自助)だ」とまとめた。また、山崎氏は、「防災リテラシー、つまり自分のこととして防災に取り組む基本知識と実践が求められる」とし、「地域を知り、過去や他の地域の災害に学ぶ、災害情報を知って、避難に生かす」ことが重要とした。
山口氏は、江東5区の水害・洪水・高潮ハザードマップと広域避難計画を説明、論議を呼んだ「ここにいてはダメです」と警告を発した江戸川区のハザードマップ広報パンフレットや、広域避難計画のタイムライン(防災行動計画)、その理解度についてのアンケート結果などを説明した。
会場は約300名の聴衆でほぼ満員となり、盛会のうちに終了した。
>>気象庁:伊勢湾台風60年シンポジウム「台風と高潮」の資料を掲載
〈2019. 11. 18. by Bosai Plus〉