「津波警報等の視覚的伝達手段」と、
その「規定化」を検討
東日本大震災で聴覚障害者の津波犠牲率は2倍
気象庁は去る10月29日、「津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会」(第1回)を東京千代田区の気象庁講堂で開催した。海水浴場等を利用する聴覚障害者等に対し、気象庁が発表する津波警報等を一層確実に伝達できるよう、津波警報等の視覚的伝達方法について検討する もの。検討会座長は田中 淳・東京大学大学院情報学環総合防災情報研究センター長教授が務め、委員は、荒井康善・一般財団法人全日本ろうあ連盟理事、石川仁憲・公益財団法人日本ライフセービング協会常務理事、井上征矢・筑波技術大学産業技術学部総合デザイン学科教授、圓道眞理・神奈川県くらし安全防災局防災部災害対策課長、梶間英次郎・静岡県下田市防災監の各氏。
検討会の目的意識としては、気象庁が津波注意報・警報または大津波警報を発表した場合、海水浴場などにいる者は直ちに海岸から離れることが必要。気象庁が発表した津波警報等は、多様な手段で国民に伝達されるが、海水浴場などではその手段が限られ、特に視覚・聴覚障害者に対しての情報伝達の確保が必要。また、気象庁が海岸を有する自治体に対し2012年度に実 施したアンケートによると、津波警報などが発表された際の海水浴場などでの避難呼びかけに関して、「聴覚」による手段に比べ、「視覚」による手段の整備事例は少ない状況であり、海水浴場などにおける聴覚障害者への津波警報等の伝達に課題がある。そして近年、国および自治体等において、視覚・聴覚障害者などへの的確な情報伝達がなされるよう配慮する方針が示されており、海水浴場などで、監視員などにより聴覚障害者に津波警報等を一層確実に伝達し、直ちに避難行動をとることができるよう、国が津波警報等の視覚による伝達手段を定め、これを広く普及することが重要、などがある。
海水浴場などでは特に遊泳者等への伝達手段が限られることから、直ちに避難すべき者に津波警報等が伝わらないおそれがある。いっぽう、東日本大震災では、防災行政無線、サイレン、広報車による避難の呼びかけが聞こえなかったことなどを背景に、聴覚障害者の死亡率は、障害のない者の2倍に及んだ。海水浴場にいる(特に遊泳中の)聴覚障害者は、スマートフォンなどの視覚的伝達ツールを持ち得ない可能性があり、海水浴場などで津波警報等の視覚的伝達手段が導入されていないと津波警報等を覚知できず、避難が遅れるおそれがある。いっぽう現在、津波警報等の視覚(形象、色彩、灯光)による伝達手段が規定されていないことから、国が津波警報等の視覚による伝達手段を定め、広く国民に周知することにより、津波警報等の視覚による伝達を全国的に普及することが必要であり、検討会では、国が定める「海水浴場等における津波警報等の視覚による伝達手段」について検討して、その結果をとりまとめる。気象庁は、同検討結果を踏まえ、津波警報等の視覚的伝達手段の規定化を検討することになる。
>>気象庁:津波警報等の視覚による伝達のあり方検討会 資料を公開
〈2019. 11. 16. by Bosai Plus〉
混雑している海岸で旗を振っても目立たない、わかりずらい。
一旦 煙幕(狼煙)などをあげ注意をうながしてから高台や見張り小屋から旗をふったり、掲示するなどしたらどうか。