被災現場のリアルな奮闘・やり取りを記録
学生たちによる避難所運営で有効であったのがSNS「LINE」で学生同士のネットワークが最大限活きた
●LINEを駆使して避難所運営に奔走した学生たち
その奮闘ぶりを交信記録で紹介
2016年、震度7という大規模な揺れが2度も発生した熊本地震。震源となった益城町に隣接する位置にある熊本県立大学もまたキャンパスや周辺地域は大変な揺れに襲われた。
地震直後から大学には、学生だけでなく近隣住民など多くの人が避難してきたが、熊本市指定の避難所ではないため、受け入れるための設備や毛布、食料も何もなく、学内は混乱状態にあった。そんな中、学生ボランティア組織が避難所運営に立ち上がる。3・4年生を中心に学生たちが自主的にボランティアグループをつくり、次第に組織化されながら、避難者の安全確保や学内の避難所運営に駆けまわった。避難者は最大1400人にのぼった。
学生たちによる避難所運営で有効であったのがSMSの力だった。特に日頃から駆使している携帯電話・スマートフォン、その中でコミュニケーションツールとして身近に使われているアプリケーション「LINE」によって、学生同士のネットワークが最大限に生かされ、避難所を利用した多くの人から感謝のメッセージが続々と届いたという。
本書では、学生たちが当時どのようにして大学内の避難所運営に携わり困難を乗り切ったかを、学生たちの視点で、LINEの交信記録をもとに振り返る。主な活動であった「配給」、「トイレ」、「誘導」に関するやり取りから学んだポイントをまとめるとともに、今後も起こるであろう様々な災害における避難所運営・被災者支援に役立ててほしいという学生からのメッセージが形になっている。
ちなみに、この学生たちの奮闘の書籍化の構想は、地震発生から1年後の17年4月から始まったのだが、当時の同大理事長で県の「くまもと復旧・復興有識者会議」座長の五百旗頭(いおきべ)真氏が、ラインの履歴が「貴重な資料になる」と注目したのがきっかけだったという。「現場のリアルなやり取りを記録した本は初めて」と高い評価を得ているようだ。
著者:熊本県立大学 学生ボランティアステーション
体裁:A5判、並製本、112ページ(カラー)/発行日:2019(平成31)年3月21日定価:本体価格1,000円+税
制作・発売:熊日出版