“そうだ、リアス線で三陸防災復興の旅へ行こう!”
未来への責務に応える
リアス線開通と「三陸防災復興プロジェクト」、「三陸復興国立公園」、
「三陸ジオパーク」
特別寄稿・齋藤徳美氏『リアス線試乗記』(別項参照)は、「鉄路の快適さに浸りつつ、震災復興に携わる一人として、未来への責務を痛感」とした。齋藤氏はこれまで、東日本大震災・岩手県復興 計画を委員長として牽引、また大津波で多数の市民が犠牲になった岩手県釜石市「鵜住居(うのすまい)地区防災センター」の被災調査報告書をまとめるなど、三陸被災地に深く関わってきた。この8年間の思いが“未来への責務”に凝縮されているようだ。その思いは、本紙、本紙読者とも共有し得るものである。
本紙はちょうど2年前の4月1日号に齋藤氏からご寄稿をいただいたので参考に供したい。
>>本紙2017年4月1日号(No.159):齋藤徳美「岩手第三期事業計画」地域創生も視野
齋藤氏は「三陸鉄道を勝手に応援する会・三鉄黒字化プロジェクト」座長でもある。本紙もここで応援団の末席に加わろう、“そうだ、リアス線で三陸防災復興の旅へ行こう!”と。
●ラグビーワールドカップと「三陸防災復興プロジェクト2019」
本年(2019年)は「ラグビーワールドカップ2019」が9月20日から11月2日に釜石鵜住居復興スタジアム(釜石市)など全国12会場で開催される。ワールドカップともなると三陸は世界的に注目されることになる。
これに先立ち、「三陸防災復興プロジェクト2019」が6月1日から8月7日(計 68日間)実施される。これは、岩手県が軸となって復興の現状への関心を高め、東日本大震災の風化防止・国内外の防災力向上に資し、三陸観光を促進して「新しい三陸の創造」をめざすものだ。音楽祭やお祭り、シンポジウムなど各種イベントが多彩に展開する。
>>三陸防災復興プロジェクト2019
三鉄関連では、リアス線全線(久慈~盛(さかり)間163km)を夜通し走る夜行列車を運行する三陸鉄道一貫運行記念「三陸縦断夜行列車」が7月20日~21日、7月27日~28日に、三陸の食材を使用したコース料理を提供する「三陸プレミアムランチ列車」が6月15日、30日、7月14日に、また、南北リアス線当時から評価の高い震災学習を希望する団体・個人向け「“復興の今” 学習列車」も6月8日、7月6日に運行予定だ。
そして、「復興の今を学ぶ」、「三陸の豊かな地域資源を学ぶ」をテーマに、全国各地からの旅行者を対象として沿岸13市町村が連携する旅行商品「いわて三陸学びの旅」も6月から8月に実施される。
●“未来への責務”を持続する(させる)復興支援の志 ツーリズム支援を
三陸鉄道リアス線は岩手県・久慈~盛(さかり)を結び、海岸沿いを行く。“リアス”(rias)とはスペイン語で「深い入り江」の意味で、三陸に特徴的な複雑に入り組んだ海岸線は津波の波高を高くするという防災上の弱点を持ついっぽう、雄大な自然景観を提供する。
リアス式海岸地形を貫く路線にはトンネルが多いが、開口部で見られる海の眺めはすばらしい。岩手県北部から宮城県北部の気仙沼湾に至る海岸部は旧陸中海岸国立公園(後述)である。
国立公園と言えば、旧陸中海岸国立公園を含むかたちで、東日本大震災後の2013年5月に創設・開園したのが「三陸復興国立公園」だ。「三陸復興国立公園」は、青森県南部(八戸市)から宮城県の牡鹿半島に至る三陸海岸一帯を占めるが、風光明媚で知られるその三陸地方海岸沿いがまさに、大津波で甚大な被害を受けた。
環境省は2011年5月に、それまでの陸中海岸国立公園と南三陸金華山国定公園に、1つの青森県立自然公園、3つの宮城県立自然公園を加えて「三陸復興国立公園」に再編する構想を明らかにし、2年後の2013年5月24日に、青森県八戸市の県立公園・種差海岸を加え「三陸復興国立公園」として開園した。
>>環境省:三陸復興国立公園
いっぽう、「三陸復興国立公園」開園4カ月後の2013年9月、日本ジオパーク委員会は「三陸」を新たに「日本ジオパーク」に認定した。「地質遺産を多数含むだけでなく、大津波によって破壊された災害遺構、見事なリアス式海岸や段丘地形、世界屈指の好漁場と沿岸で育まれた豊富な海産物など、大地の生い立ちと深く関わってきた三陸の人びとの暮らしぶりが魅力」というのが認定理由だ。
>>《Bosai Plus》2013年10月1日号(No.75):「三陸ジオツーリズム」への期待
リアス線開通と「三陸防災復興プロジェクト2019」、そして「三陸復興国立公園」と「三陸ジオパーク」も揃い踏みとなれば――未来への責務の発露・持続の志として、“そうだ、リアス線で三陸防災復興の旅へ行こう!”