《本紙特約リポーター:片岡 幸壱》
「阪神大水害デジタルアーカイブ 公開イベント」(主催=阪神大水害80年行事実行委員会)が去る11月24日、兵庫県看護協会(兵庫県神戸市中央区)で開催され、生徒、学生、一般、当日参加などを含む約370人が参加した。
1938年(昭和13年)7月に神戸市を中心に六甲山地で死者・行方不明者695人の被害をもたらした「阪神大水害」から80年が経過した。同イベントは、「個人の記憶を社会の記憶に」をスローガンに「阪神大水害デジタルアーカイブ」を広く社会に周知し、教訓を次世代へとつなぎ、防災意識向上させることを目的として開催。会場ではアルバム、資料の展示も行われた。
■講演
久元喜造・神戸市長などによる主催者・来賓挨拶の後、沖村 孝・神戸大学名誉教授が「阪神大水害と近年の豪雨災害について」をテーマに1938年(昭和13年)、1967年(昭和42年)、2018年(平成30年)の豪雨の違いなどを取り上げて「普段から備え・訓練・市民のリスク認知向上への取り組みが重要だ」と述べた。
浦川 豪氏(兵庫県立大学大学院・減災復興政策研究科・准教授)が「阪神大水害デジタルアーカイブ その意義と活用に向けて」をテーマに「国民誰もがインターネット等を通じて容易に利用(加工、編集、再配布等)できるよう公開されたデータを多くの人が活用することで、フィールドワーク支援ツールなど、活用アイデアが集まるのではないか」と語った。
■体験談(私の体験した阪神大水害)、研究発表(私たちが知ることのできた阪神大水害)
当時、北野小学校(神戸市中央区)、湊川高等実業女学校(神戸市灘区)で被災したゲストの体験談が語られた。
神戸市立住吉中学校 生徒会有志(住吉川流域)、神戸市立渚中学校防災ジュニアリーダー(都賀川、新生田川流域)、神戸常盤女子高等学校 生徒会有志(新湊川流域)が「災害記憶の発掘プロジェクト」に参加し、学習の一環として体験者のインタビュー、現地調査などに取り組んだことを発表した。
神戸常盤女子高等学校(木村光雄校長)は、長田神社の現地調査・体験者の聞き取り・学校周辺の被災写真収集などに取り組み「今回の調査を通じて、普段から災害に対して危機感を持つことが大切だと感じた」と報告した。
■「災害体験の記憶を後世に残す」重要性
阪神大水害デジタルアーカイブの「災害体験の記憶を後世に残す」という事業の重要性を改めて認識した公開イベントだった。また、阪神大水害から80年という年数の重みを更に強く感じた。
阪神大水害を知らない世代が、体験談・災害記録映像などを活用することで、知識・関心度が高まり、将来の災害の備え・避難行動に活かされることを期待したい。
▽本紙特約リポーター:片岡 幸壱
神戸市在住。中学2年のとき阪神・淡路大震災に遭遇、自宅は全壊したが家族は全員無事避難。学生時代より取り組んでいる防災を仕事と両立しながら、ライフワークとして、ユニバーサルデザイン(UD)などのイベント・ボランティア参加を続けている。聴覚障害を持つ防災士としても活躍中。
▼本紙関連記事:
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▼参考リンク: