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○防災省は立ち消えても……国、自治体 続々防災士活用へ
○知事・市長自ら「防災士になる!」 自助・共助の実践者としての市民タスクフォースへ。
【 地方議員の防災士志向、ますます高まる 国・自治体も防災士活用へ 】

●防災省論議 立ち消えか、のいっぽうで、注目の「岩手県議 全員防災士に」

本年6月の大阪府の地震、7月西日本豪雨と災害級熱波、続く台風21号、9月の北海道地震、そして自民党総裁選などを受けて瞬間湯沸かし的に盛り上がった(?)防災省論議も、総裁選を追えて長期政権の継続を見て早、立ち消えかと思われる。
しかしいっぽう、防災をめぐっては大きなニュースもあった(とくに防災関係者にとって)。「岩手県議 全員 防災士取得へ」がそれで、本紙は創刊8周年となる先の9月1日付けで、岩手大学名誉教授・齋藤徳美氏からの寄稿をもってそのニュースへの“祝砲”とした。
>>防災情報新聞2018年9月1日付け:齋藤徳美氏寄稿「岩手県議 全員 防災士取得へ」

というのも、本年の一連の災害を受けて行われた各種テレビ討論やメディア上での有識者の発言に、「地域防災に民間の専門家を増やす」、「ハザードマップなどの防災情報を近隣コミュニティできめ細かく活かすための人材育成」、「気象情報や行政の防災情報に基づいて近隣住民の避難・身の安全確保を後押しする身近な防災実践者の配置」が重要といった発言が多く聞かれたことがある。防災行政が広域化し、少子高齢化の時代趨勢のなかで消防団員の減少に歯止めがかからないいま、それらの見解はまさに「防災士」の社会実装を待望する見解だからだ。

防災情報を的確に理解し、地域の隣近所の人たちの避難を後押しし、自ら率先避難者となる人、学校や会社で管理者、上司に災害対策、事業継続、タイムライン(防災行動計画)を提案する人――それらはまさに、防災士の資質と重なる。そして、そのニーズを受けた“地域の為政者”たる地方議員が防災士志向となるのも、極めて自然であり、その志やよし、である。

●行政首長(くびちょう)の志やよし、県・市をあげて防災士をめざせ

日本防災士機構によると防災士認証登録者数は2018年8月末現在で15万3888名。阪神・淡路大震災の教訓を元に誕生した防災士制度は2003年10月に防災士第1号認証(同時防災士認証者数216名)以来15年、わが国での災害頻発を背景に、全国で防災士を輩出し続けてきた。近年は多くの自治体が防災士養成事業に乗り出して(防災士養成研修実施県:22、市区町村・地域連合体:34)防災士資格取得希望者に公的な支援を行っており(助成制度のある自治体:338)、また大学など教育機関も学生の資格取得を支援し始めている(防災士養成事業実施大学等教育機関:30/件数はいずれも日本防災士機構HPより)。

「岩手県議全員防災士へ」は全国初ということだが、実は10年前、地方自治体で初めて市長・全職員が防災士になる、と防災士育成に取り組んだのが栃木市だ。当時の日向野(ひがの)義幸栃木市長が、災害対応力を高めるとして市職員(約620人)全員が5年計画で「防災士」資格を取得する方針を2007年10月に決定。手始めに日向野市長はじめ職員53名全員が防災士試験に合格した。日向野市長はその動機づけとして、「市民の安全・安心、生命・財産を預かる立場にある市の職員が、防災の基本的な知識・心構えを持つことは当然。職域が変わり立場が変わっても職員全員が災害と防災の認識を共有し、市民への市民全体の奉仕者としての意識を持ってことにあたる」と語っている(防災情報新聞 2008年1月17日発行号より)。

いっぽう、3年前に知事自ら防災士となって防災士育成に努めているのが大分県だ。大分県は南海トラフ巨大地震への備えを喫緊の課題として防災・減災対策に取り組んでいるところだが、東日本大震災を機に防災士養成事業に取り組む。広瀬勝貞・大分県知事(2003年4月~)は「県民一人ひとりの防災意識の向上が重要。自助・共助の中心的な役割を担う自主防災組織の活性化を図るため、その核となる防災リーダーの養成が急務」としている。

大分県は2012年度に防災士3000人の養成を目標に掲げ、県内各市町村で合計31回の防災士養成講座を開催、2700人以上の防災士を養成。翌13年度には広瀬知事自らをはじめ県会議員、市町村長をはじめ約800人が、14年度には自主防災組織に加えて学校、社会福祉施設や事業所などでの積極的な取組みにより約1100人の防災士が誕生した。2018年8月末現在、大分県の防災士認証登録数は9396人と、1万人を目前にしている。

●国も防災士を高く評価 来るべき?防災省では即 実装可能なタスクフォースに

国(総務省消防庁)は本年(2018年)1月、「消防団員の確保方策等に関する検討会報告書」を公表、新たに「大規模災害団員」を導入する方針を発表した。そのなかで、「自主防災組織等の強化と消防団との連携を図り、消防団員や防災士などの防災活動に関する知識が豊富な人材を指導者として、自主防災組織などのリーダー育成の取組みを進め、地域防災のレベルアップを図る」としている。

そして、大規模災害団員の「想定されるなり手」(例)として「防災知識などが豊富な防災士、水防団員(水災においては水防団員として活動)、救助救急などの必要な技能を持つ者」とし、防災士への期待が込められた内容となっている。
ちなみに大規模災害団員の具体的な活動として、大規模災害時に災害情報の収集・報告・地域住民への伝達、避難誘導・安否確認、避難所運営支援などが想定されている。
>>総務省消防庁:「消防団員の確保方策等に関する検討会報告書」の公表

また、内閣府においても、災害対策基本法に基づく「地区防災計画」の推進において、防災士への期待が示されるいっぽう、防災士の有志で構成されるNPO日本防災士会(会員数約8000名)は2018年度の事業方針として、「防災士会会員は地区をめざそう!」をスローガンとする地区防災計画推進キャンペーンを打ち出している。

このようにいまや防災士は、少子高齢化と人口減少、市町村合併で広域化する地域防災に欠かせない地域防災の即戦力として、行政にとっても有力なサポーター的存在になった。巨大災害の切迫感の高まりとともに、近い将来実現されるかもしれない防災省においては、防災士は即実装可能な“市民タスクフォース”として、地域防災の堅固な地盤強化に資することだろう。
>>日本防災士機構

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